禍是杜明里と檜森クロ -風呂-
明里
「
サウナが好きだ
銭湯が好きだ
温泉が好きだ
露天風呂が好きだ
砂風呂が好きだ
足湯が好きだ
水風呂が好きだ
シャワーが好きだ
沐浴が好きだ
熱海で 湯布院で
伊豆高原で 伊東で
鬼怒川で 南紀白浜で
湯河原で 草津で
伊香保で 有馬で
この地上で行われるありとあらゆる入浴行為が大好きだ
際まで入れたお湯を自分の体が飛沫と共に押し退けるのが好きだ
露天風呂で半身だけ浸かり夜風で火照った上半身を冷ます時など心が安らぐ
ちょうどいい温度のシャワーがボディソープを洗い流すのが好きだ
一日の汚れや埃が載った髪をリンスインシャンプーで洗う時など胸がすくような気持ちだった
熱めのお湯で烏の行水するのが好きだ
心拍数が上がり肌が紅潮していく様など感動すら覚える
ぬるめのお湯で長風呂したときなどはもうたまらない
人目もはばからずお気に入りの歌を口ずさむのも最高だ
風呂上がりにコーヒー牛乳をイッキした時など絶頂すら覚える
風呂に入ったままうとうとするのが好きだ
必死に守るはずだったタオルが湯船に落ちてびしょびしょになっていく様はとてもとても悲しいものだ
シャンプーが目に入り沁みるのが好きだ
濡れた床で尻餅つき地べたを這い回るのは屈辱の極みだ
更なる入浴を望むか?
情け容赦のない溶岩の様な熱湯を望むか?
長風呂の限りを尽くし体を温める体温の様なぬるま湯を望むか?
『風呂! 風呂! 風呂!』(裏声)
よろしい ならば入浴だ
我々は満身の力をこめて今まさに入浴せんとする女二人だ
だがこの冷たい娑婆で半日もの間堪え続けてきた我々にただの風呂ではもはや足りない!!
大浴場を!!
我らはわずかに二人 三人に満たぬ湯治客に過ぎない
だが
ならば我らは
我々を疲労の彼方へと追いやり体内を循環している乳酸を叩き起こそう
髪の毛を洗って束ね上げ体を洗って清潔にしよう
天と地のはざまには私たちの日常では思いもよらない夜景があることを思い出してやる
二人のオーヴァードの湯治客で体の汚れを洗い尽くしてやる
そうだ あれが待ちに望んだ自動販売機の光だ
私は
『明里殿!明里!禍是杜!禍是杜殿!禍是杜明里殿!』(裏声)
そして私はついに湯船を上がり
クロちゃんに伝達 友達命令である
さぁ
百 ま で 数 え る ぞ」
クロ「私先に上がるね」
明里「あ、うん」
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