第8話【そもそも『鉄道写真』とは——】

 ふたり屋上に戻ってきた。しかーし、にっこーちゃんは屋上に着くや妙なことを口にした。

「富士彦くん、わたしあの写真について『誉めことば』しかもらってないんだけど」

「どー、えっと、どーいうこと?」

 にっこーちゃんの撮った写真をけなしたくなどないのに。

「たぶんあの写真は鉄道写真のキホンを外しているのよね?」と、さらににっこーちゃんは突っ込んで訊いてきた。

「なんでそんなことを訊くのかな?」


 心にもないことを言ったつもりは断じてない。けど目が空を泳ぎ始めているのが自分でも分かる。にっこーちゃんに正面から見られて言われると不思議と威圧感がある。あの写真部長も手を焼いていたように見えたし。


「あの写真は『鉄道写真部』設立に向けたデモ写真で、生徒会の人に見せるから」にっこーちゃんは理由をハッキリと口にした。

「それはどういう……?」

「写真にケチをつけられる可能性もあると思うんだよね。その際『鉄道写真のことを解っているけど敢えてこう撮ってる』と言えるようにするためだから。ここからは鉄道知識が問われると思うんだよね」

 そのことばににっこーちゃんの強い意志を感じた。


 つまりいよいよ僕の番が来た。調査報告。気が重い。あの写真、こと『鉄道写真として』となると……

 このまま何も言わないままでいると僕がなんにも調べてこなかったようでにっこーちゃんに呆れられるかもしれない。自分の意見を言うってけっこう重圧だよなあ。


「『基本を外しているかも』についてはその通り」

「じゃあわたしの撮ったこの写真は『鉄道写真じゃない』って言われるの?」

 そのにっこーちゃんの顔は極めて厳しかった。自分でその話し振っておいてそんな顔しないで欲しい。

「もちろん鉄道写真だけど」被写体として鉄道を撮っているというのだけは明瞭に分かる。

「富士彦くんの言ってる意味が分からない」

「前にさ、写真と鉄道写真撮って、撮ってる人がそれぞれ違う方向性の人のような気がするって感じのこと言ってたでしょ? その感覚」

「分かりやすく説明して」

「……分かりやすくか、なんて言えばいいのかな。鉄道写真とは……」

「鉄道写真とは?」にっこーちゃんが復唱する。

「絵ハガキ?」

「絵はがき?」

「あるいはカタログとか」

「ぐ、た、い、て、き、に!」

「例えばさ、富士山の写真って『ここから撮れば誰でもいい写真が撮れる』っていう場所があるよね?」

「それと同じなの?」

「うん。『有名撮影地』っていう場所がある。俗に『お立ち台』って言うらしい。そこから撮れば誰でもいっぱしの鉄道写真が撮れる」

「そうか。それで絵はがきなんだ」

「そう。ちなみにこの屋上じゃあお立ち台にならない」

「何となく分かるから。要するになに? 景色のいい場所でしょ? 山とか海とか」

「そう、そういうこと」

「じゃあカタログってのはなんなの? 絵はがきとカタログってのもけっこう違うよね?」

「鉄道写真の基本ってさ、『編成写真』っていうらしい」

「へんせいしゃしん?」

「列車のさ、先頭から一番最後まで一枚の写真に収まるよう撮るらしい」

「じゃあわたしの撮ったこの写真は……」

「まあ鉄道写真の基本からは逸脱してるよね」

「感性だから」

「……にっこーちゃんってさ、写真を撮るとき『何を撮るか』よりも『どう撮るか』に比重を置いているよね?」

 我が意を得たりという得意げな顔をにっこーちゃんはした。

「写真部だから!」

「……うん。でも……」

「でも?」

「いろいろ調べてみて分かったことがあるんだけど」

「なにが?」

「鉄道写真は『何を撮るか』だから」僕は断言した。

「鉄道に決まってるじゃない!」と、あっさりとにっこーちゃんに言われてしまった。ウン、普通の人はそう考えるかも。

「いやそうじゃないっ、ていうかそうじゃなくて、鉄道ならなんでもいいってもんじゃないと」

「じゃあなに撮るの?」とにっこーちゃんは詰問するように訊いてきた。

「薄々分かっているんじゃないの?」僕は言った。

「ひょっとしてSL?」


 SLとは要するに蒸気機関車のことである。にっこーちゃんが口にして、僕も知ってるくらいだからメジャーな被写体である。だがしかし——


「あそこの線路ってSLなんて通らないし!」にっこーちゃんは屋上フェンスの向こうを指差し言った。普通通らないだろうな。そう、そういうことなんだ。

「だから『鉄道写真を撮る!』とか言って部活を作ろうとしても、撮りたい写真がSLじゃあ『学校でできないよね』って言われて却下されるでしょ?」、さらに僕は続ける。

「——つまりここが肝心なところなんだけど、何を撮るかと訊かれてその答え次第でホンモノの撮り鉄っぽくなったり嘘くさくなったりする」

「つまり、あの線路の上を走る珍しいモノを言えれば本物っぽくなるんだね?」にっこーちゃんが訊いた。カンが鋭くて助かる。

「その通り」

「SLじゃないのならなに撮るの?」

「実は……」と僕は口を濁す。

「じつは?」

「ほとんど無い」

「はぃ?」

「基本この僕らの住んでるこの県は鉄道写真を撮るのに向いてない」

「なんで?」

「JR東海だから」

「ごめん。意味が分からない」

「珍しいモノ、いや被写体と言った方がいいか。それがほぼ無い」

「まさか、『珍しいモノ』を撮らないと鉄道写真にならないっていうの? じゃあフツーの電車の立場はどうなるの⁉」

「言いたいことは分かる。しかし珍しいモノを撮った方がいいのが鉄道写真の現実」

「いまさっき富士彦君は『ほとんど無い』って言ったのよね。ということは少しはあるってことだよね?」

「他の地域に比べると少なすぎるけど」

「ふーん」と、にっこーちゃんは何事かを思案中。

「つまりこういうこと? わたしの内心がどうなっているかは別にして、珍しいモノを撮ろうとしない撮り鉄はいないってことだよね?」

 少し驚く。

「否定しそうな雰囲気だったけどしないんだ」

「確かに珍しいモノを撮るってのは『ある種のジャンル』ではあるから」とにっこーちゃんは肯定。

「『ある種のジャンル』って?」

「富士山よ。ダイヤモンド富士とかパール富士とか、珍しいから人が集まるのよね。あと傘雲のかかった富士山とかいつ出現するか分からないものとかもあるし」

 まあそうだよなぁ……とぼんやり考えているとにっこーちゃんの視線を感じた。きっ、と口を結び真面目な顔に。

「話しを元に戻すね。——つまり、こんなにも珍しいモノが通らない場所に鉄道写真を撮りたがる人がいるわけない、と。そういうこと?」

「ゼロじゃないけど」

「なーんだ、心配して損しちゃった。少なくとも『わざとらしい』とか『不自然』とかはないわけね」

「まあ」

「もしそうなら『鉄道写真部』が成り立たなくなるとこだった」にっこーちゃんは言った。

「で、その数少ない珍しいモノってなに?」

「珍しいモノランキングではいまひとつだけど」

「え? ランキング? それ知っておきたい!」

「なんで?」

「そういうのを知っていればマニアっぽく見えるでしょ。トップがあって次点とか次々点とか一通り順番を頭に入れておかないと」

「でもランキングは人それぞれってことで」

「じゃあ富士彦くんの意見は? だいたいなにかこう、珍しいモノには『傾向』みたいなものってあるんでしょ?」

 傾向ね。

「一般論で、古いモノほど価値があるとされる」

「じゃあ古い新しいは相対的だからここにも古いモノってあるよね」

「まあ比べれば古い新しいはあるけど、鉄道写真的にあまり古いとは思われていないものばっかり」

「ある程度古いじゃダメなの? だいたい古い古くないの基準はなに?」

 う〜ん。

「たぶん『国鉄』かと」

「こくてつ?」

「日本国有鉄道。アルファベット表記で『JNR』」

「じゃぱん・なしょなる・れーるうぇいず?」

「そこまで調べてないけど……たぶんそうじゃないかな。それで——確か」と言いながら自作の資料をめくる。

「西暦1987年3月までその国鉄ってのが存在してて、それ以前に製造された車両が鉄道写真の被写体として好まれる傾向がある」

「つまり結局SLってことよね」

「まあ確かにSLに『JR型』なんて無いけど」

「だけど変よね。その『国鉄』ってのが無くなってからもう三十年以上も過ぎてるけど、このままじゃ国鉄からの電車とか無くなるのも時間の問題よね。っていうかもうほとんど残っていないんじゃない? ならもうすぐ『鉄道写真』を撮る人がいなくなるっていう理屈になるんだけど」

 確かにそうだ。

「まあ鉄道の車両って定期的に廃車になって新しいのが来るから、無くなりそうなもののところに人は集まるよね」

 俗にこれを『葬式鉄』というらしいのだが、まあ縁起でもないので語るは省略だ。

「つまり一番珍しいモノは『国鉄時代から』ってやつだけどこれが無くなりつつある——次点とか次々点とか具体的に言ってみて」とにっこーちゃんに訊かれる。

 具体的か……

「『機関車』じゃないかな。『SL』は蒸気機関車だけどディーゼル機関車とか電気機関車とか……」

「機関車にも『国鉄時代から』ってのがあるのよね?」

「ある。ただし、機関車なら必ずしも『国鉄時代から』じゃなくてもいいみたい」

「それならあそこの線路の上も貨物列車が通るんだけど。電気機関車が引っ張っているのよね、あれも」

「実はその、『何を引っ張るのか』が問題なんだよね。貨物列車は……コンテナばかりだから」

「じゃあなに引っ張ればよくなるの?」

「SLと同じだよ。客車を引っ張るのがいいみたい。機関車が客車を引っ張ればそれだけで珍しいモノになるみたいで」

「それはたまにしか走らないってこと?」

「そう。だからそういうのが走ると撮り鉄がもの凄く集まるみたい」

「じゃああそこの線路にも——」

「残念ながら走らない」

「なんで?」

「JR東海だから」

「……それ走ってるのどこ?」

「どこと言われてもいろいろだけど、JR東日本とかJR西日本とか。『国鉄イベント系』では埼玉県、ないし群馬県の中が一番多い感じがするような……」

「まるで……関係……無いよね」

「でも大井川鐵道なら『西武の機関車+客車』という列車が時々走るみたい」

「とは言っても目の前にあるあの線路は……」

「JR東海だから」

「……まあもうランキングの話しは無しにしましょう」にっこーちゃんがここで話しを打ち切ってしまった。

「わたし達の目的はなんとしても鉄道写真部立ち上げて学校にカメラを持ち込めるようにすることなんだから!」


 学校にカメラを持ち込んでいったい何を撮ろうというのだろう? そういう僕も写真部に入って持ち込もうとした一人だけど。


「このままじゃ帰宅部になっちゃう」さらに続行でにっこーちゃんが言う。「他所はこの際関係ない。あの向こうに見える線路を走る中で最も珍しいモノの名が必要なのっ」

 どう説明したらいい? 考えを整理する。

「時刻表って知ってる?」

「分かるよそれくらい。時刻表ってのは何時何分に電車が来るとかいうのが書いてある月刊の雑誌だよね」

「実は珍しい列車というのは時刻表に載ってない」

 にっこーちゃんが静止した。

「ちょっと待って! それおかしくない? 貨物列車なんて時刻表に載ってないけど『別に珍しくない』って言ったばかりじゃない」

「話しが飛ぶけど、貨物列車の時刻表ってあるから。一年に一度出てる」

「え? そんなのあるの? 乗れないのに?」

「人は乗れなくても荷物は載るから時刻を知りたい人もいるってことじゃないの?」

「じゃあ時刻表に載ってない列車ってなんなの?」

「事業用列車とかいうやつ」

「具体的にはどういうの?」

「黄色い色の新幹線って知ってる? 『ドクターイエロー』とかいうの」

「あっ、聞いたことある。なんか、検査しながら走るのよね」

「確か架線だよ」

「だけどあそこの線路は新幹線じゃない」そう言ってにっこーちゃんは彼方の東海道線を指差した。

「でもあそこにもそういうのは走ってる。『キヤ』とかいう名前のやっぱりこれも黄色い車両らしい。これには二種類あって、架線を検査するタイプとレールを運搬するタイプがある。特に後者の列車の方は『工臨』というらしい」

「コーリン? こうりん? 尾形光琳?」

「なにしょうもないこと言ってんの。工事臨時列車、略して工臨」

「工事? 線路って道路みたく工事なんてするの?」

「するよ。レールの上を一日どれくらいの列車が通っていると思うの? そのうちレールが磨り減るって思わない?」

「じゃあいつの間にか新しいのに取り替えてたんだ」

「まあ知らないところでね。夜中にやるんだよ。その取り替える現場までレールを運ぶ列車らしいんだ、工臨って」

「あそこには確実にその列車は通るんだね?」

「通る」そう断言した。

「ぜひ一度くらい見てみたいよね」とにっこーちゃんは口にして、しかし少し考える風。

「どうかした?」と僕は訊く。

「その列車、時刻表に載ってないのよね?」

「載ってない」

「載ってないってことは『いつ来るか』なんて分からないよね?」

「まさしくその通り」

「鉄道写真って基本的に『待ち伏せ』よね?」

 女子に『待ち伏せ』なんて言われるとちょっとな……

「まぁ、そうだよね。シャッターを切る辺りにあらかじめピントを合わせておくのが鉄道写真の基本らしいし」

「それは『鉄道写真の撮り方』の一般論でしょ。来るか来ないか分からない列車をずっと線路端で待ってるの?」

「いいや、鉄道写真はそういうジャンルの写真じゃない。ネイチャーフォトじゃあるまいし。『来る』と分かってるものを撮るのが鉄道写真だよ」

「じゃあおかしいよ。時刻表に載ってない時点でそんなの撮りようがないじゃない。どういうことなの、これ」


 手元の資料をめくる。

「そのカラクリは『運転報』ってやつらしい」

「ウンテンホー?」

「いや、それだとなにかの呪文だ。発音は『ウ』にあるんじゃないの?」

「それっていったいなんなの?」

「鉄道会社の内部資料」

「資料?」

「考えられることは一つしかないでしょ。鉄道会社の内部資料にアクセスする以外、事前にその列車が『来る』なんて知りようがないでしょ」

「会社に置いてある資料なの?」

「いや、会社っていうか駅だな。ほら駅でさ、『まもなく列車が通過します白線の内側まで下がってください』とかいう放送って聞くでしょ。あれって何時何分に列車が来るか事前に分かっているからああいう放送が流れるわけで」

「じゃあ駅に行って訊けばいいのね」

「いや……やめといた方がいいんじゃないかな。だいいち教えてくれそうもないし」

「でもその『コーリン』とかいう列車の写真ってあるんでしょ? だったら誰かが内部資料にアクセスしてるってことじゃないの。まさかハッカー?」

 たぶん違うだろう。

「考えられるのはアクセス権限のある人本人か、その友だちから——じゃないの」


 鉄道写真は被写体とのコミュニケーションはとらなくても大丈夫だけど人間同士のコミュニケーションはやっておく必要があると解って気が重くなった。結局コミュニケーションかよ。


「それっていわゆる『情報流出』ってやつじゃない?」にっこーちゃんが警察のようなことを言う。

「まあそうかもしれないけど、あんまり言うとみんなが不幸になるから曖昧にしてんじゃないの? 憶測だけど。ほら、さっき黄色い新幹線の話しをしたよね?」

「うん」

「どういうわけか『何月何日に運転する』ってのが事前にインターネットで知ることができたりする」

「どういうこと? 鉄道会社の内部資料じゃないの?」

「実はドクターイエローって十日に一度くらいの間隔で走っているらしい。そこで、『これはあくまで予想です』と銘打たれてそういう事前の情報が載っている。しかも何時頃この辺りを通過するという時刻と共に。しかし本当に予想なのか、内部資料じゃないのか、こちらからは分からない。だけどそのおかげでドクターイエローが走る日はみんなで有名撮影地に集合できるってわけ。まさか新幹線の運転指令所に『ドクターイエロー次いつ動くか教えて』なんて電話掛けられないでしょ。警察沙汰になるかもしれないし」


 にっこーちゃんは『鉄道写真部』設立のために駅に押しかけかねない。そうでなくても芸能人がローカルな本線で踏切からちょっと線路に入っただけで警察沙汰の大騒ぎになったのだ。


「あくまで『予想』なわけね」にっこーちゃんは再度確認するように言った。

「まあ定期間隔で走っているから予想は成り立つよね」

「っていうか話しが新幹線になっちゃってるし、あくまであそこの線路が問題なのよ! そっちの話しはどーなったの⁉」にっこーちゃんは話しの本線を思い出したらしい。

「事前に珍しい列車が通るのが分からないとダメじゃない! さっきの『きや』はっ?」とさらにそう付け加えた。

「レールを運ぶ『キヤ』については目撃情報から予測するという方法がある」

「もくげきじょうほう?」

「列車機関車などの目撃情報が集まって来る掲示板がネット上にある。列車というのは基本往復だから。往路に見たという情報があった場合、復路で撮れる可能性が出てくる」

「往路と復路なんて箱根駅伝みたい」

「そう。行きの日と帰りの日が違うパターンは撮りやすい。日々の情報チェックが重要というわけで」

「でもねえ……」とにっこーちゃん。「なんかマニア受けはしそうだけど一般人受けは今ひとつみたい……」などと言い始めた。


 ……鉄道写真なんてものが一般に受けるとは思えないが。しかし生徒会の人は一般人だ。なるべく受けるものについて、頭に入れておく必要はある。


「それなら電車を引っ張る電気機関車というものがある」僕は言った。

「え? 客車を引っ張るじゃなくて?」

「引っ張るのはあくまで電車だよ」

「あれ、でも変よね。電車って自分で走れるんだよね? 機関車に引っ張ってもらう必要無いんじゃない?」

「へえ」

「なによ?」

「客車と電車の区別がつくなんて凄いね」

「当たり前でしょ。客車だけで走れたらSL要らないじゃない」

 まあ、ごもっとも。

「でもなんでそんなヘンな列車が通るの?」

「専門用語で『甲種輸送』というらしい」

「こーしゅ?」

「そう。甲子園の『甲』に、種類の『種』。あとは『輸送』ね」

「詳しく」

「電車ってさ、電車工場で作るよね? その出来上がった電車を注文した鉄道会社に届けるのが『甲種輸送』。私鉄がJRの線路の上を走ったり、地下鉄までJRの線路の上を走ったり、何年か前に秋田新幹線もあそこを走ったみたい」

 僕は東海道線のレールを指差した。

「あそこを走ったの? 新幹線が? 新幹線って新幹線のレールの上を走るんじゃないの?」

「『甲種輸送』だからね。新幹線があの線路を走ったなんて僕も初めて知ってびっくりだよ」

「凄いっ。凄いじゃない!」

「残念ながら二度と通りそうもないけど」

「新幹線は無理だけどそういう列車がこの辺でも走るんだったら鉄道写真部を立ち上げる大義名分になる。訊かれてもそういうのを撮るんだって生徒会に言えば本物の鉄道好きに見える! いいじゃない!」


 にっこーちゃんは僕の付け焼き刃的に調べた情報にかなり感銘を受けてくれた様子、これはこれでやっただけのことはあったと嬉しくなる。

 嬉しくはあるけれど————

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