第5話【調べ物、時々悲愴——そして自己暗示】
金曜はほぼほぼ成果ゼロ。
土曜になった。
窓ガラスに滝のように雨粒が流れていく。外の視界がぼやけてる。春の嵐というやつだ。なんでこの季節にこんな大雨と大風が押し寄せてくるのかという。外に出られるような天気じゃない。調べ物日和というやつだな。
日曜になった。昨日とは一転、実にいい天気だ。こんな日にパソコンで延々カチカチマウスをクリックし続けインターネットとはね。まあどこかへ出かける用事も無い。
そうか、用事が無いんだな……
ウン、用事の無い日曜。
他人との会話には苦労する。スマホの無料通話アプリでもどう短く的確に言葉を返せばいいのか熟考してしまう。まして会話するように文字を入力できない。あれもまた一種の才能ではないだろうか。あってもしょうもないような気がしないでもないが。
とにもかくにも共通の話題が無い。ましてテキトーに放り込まれたクラス連中とは合わない。悪い方の意味で想像通りになってしまった。
だけど最初はあまり悲愴感は無かった。
なに、写真部に入れば、そこには話しの合うヤツがいるに違いない。そう思った。だが違った。あの写真部には話しの合いそうなヤツが一人もいない雰囲気だった。逆に合わなさそうな人間たちの巣になっていた……
鉄道写真か……果たしてこれが部活動に繋がるのかどうか。
だが、この『鉄道写真部』を実現させるか否かが、僕の高校生活を大きく左右しそうである。下手すりゃほぼ三年間、一日中誰とも口をきかないで過ごせてしまうかもしれない。
そんなのは嫌だ。
もし『鉄道写真部』が実現しなかったら、僕とにっこーちゃんの関係はどうなるんだろうか?
考えたくはない。考えたくはないが——
『じゃあね』になるような気が激しくする。
現実、『鉄道写真部』、この部活の設立は限りなく無理だ。にっこーちゃんが鉄道写真を撮っても僕が鉄道周りの知識を集めても、新部活設立においての最大ハードル『部員5人問題』が立ちはだかるのだ。
そんな者は集まるまい。集まらないことを前提にどうすれば僕はこの後にっこーちゃんとの接点を維持し続けられるだろうか?
答えは割とすぐ出た。
写真だ。僕の写真。それでにっこーちゃんが興味を持ってくれればそこがとっかかりになるはずなんだ。
『鉄道写真部など実現するはずがない』と思っているのに鉄道のことなど調べ続けている。自分はいったい何をしているのかという感覚に襲われつつ、必要な文章をワープロソフトに貼り付け整えコメントを付けたしレポートをまとめ上げていく。
これは必要な過程なのだ。
そうして時間とともにそれらしく見える資料が形になり始めた。だけどあんまり集めても読まないんじゃないか? 例えば、レポートを百ページにしていいだろうか?
逆に変に思われたりしないか?
ともかく余計な情報はそぎ落とし分かりやすく。『ATCのしくみ』だとか『勾配標の読み方』だとかそういうのは省いて直接鉄道写真に関係する情報に絞る。それでも少しかじっちゃったからこういう考えを持つに至っているんだけど————
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