折り鶴が飛んだ日
3-1
第1音楽室の窓際、二羽の折り鶴が西日を浴びる様が美しかった。
金の折り鶴と、柄の折り鶴。
勢い任せにピアノでもひけば、立派な翼をはためかせ今にもオレンジの空めがけて飛び立ちそうな二羽を、かれはただ眺めている。
室内に散らかりこだまする高低さまざまな談笑の声も、一つの雑踏に変わっていく。
何ら特徴もない折り鶴の翼に魅入られる自分を、かれは不思議に思った。
かれは今、雑談の集合体と化した吹奏楽部からタマシイが抜け出し、二羽に取り憑かれている。
特に金の折り鶴。
強い翼だと思った。きっと、どこまでも飛べるのだろうな、かれはその翼にのって、風にのって、夜を目指すかれ自身を生み出しては、高揚感を覚えた。
今日は、うまく音にのっていけそうだ。
トランペットを優しく撫でた。
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