2-6
実はサクラの中、唯一、演劇部自体に関係のないものがいた。
こっこだった。
羽賀とは友人で、今回のサクラ役をこっそり頼まれていた。事情は詳しく知らされておらず、何のことかと出ていけばこの感動の有り様。
誰かのために何かをしたくなる。それって、やっぱり間違いじゃないんだよね。
でもこれくらい私も上手くやれたらいいんだけど。
こっこは、一香のことを思う。
大好きな一香の笑顔。幸せそうな笑顔。今のハガちゃんみたいな笑顔、きらめかせてほしいな。そんな想いは、普段縁もゆかりもないプレミアムをどうにか入手して(実際にはパックしか入手していないが)青野くんと話すきっかけを作ることに繋がった。
「でもスマートじゃなかったよなぁ。怪しまれてたし。多分バレたし」
小さく呟く。
こっこの両頬に涙の線が引かれていく。
周りの一年生はギョッと引いたけれど、熱気ままならない空気の中、特に気にもとめず、ただ未来の自分たちを思い描いて盛り上がっていた。
こっこにも優しい芽が、息づいている。
スマートにやれなかった、そういう悔しい思いもあるにはあるが、今日の公演に参加して、こっこは自分が許されたような気持ちになっていた。
そんな安堵の涙であった。
そうだ、ハガちゃんにもこの前の焼きそばのこと、話してみようかな。
春のようなあたたかさが心を満たしている。
こっこは既読をつけたままにしていたRINEを開く。涙に濡れた手が、フリックの反応をバグらせて、誤字だらけのへんてこな文章が、飛んでいって、とどいた。
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