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ベランダから見る夜は最高に美しい。名前も分からない星がきらめいているのを見て、綺麗だなー、なんて思う私は呑気なのかな。一香は考える。

こっこたんがおかしかったこと、もう一つだけあった。それは岸蔦先輩には伝えていない。

こっこたんが、露骨に青野くんに話しかけたこと。

岸蔦先輩の言葉を借りるなら、全て推測に過ぎない。でも、きっと、そうなのだろうな、一香は不思議と確信を持っていた。

こっこたん、普段はあんなに青野くんに私を近づけさせようとしない。何かきっかけがない限りは。でも今日はそれがあった。プレミアムだ。

青野くんが昨日、プレミアムの話をしていたことをこっこたんも聞いていたはず。こっこたんがプレミアムを持っている今日は、私にとってチャンスだった。そのチャンスを生み出したのはこっこたんではないか?

なぜ今日だったのか、思い当たる節があった。一香は、RINEを開く。トーク画面は、もちろんこっこ。スマホのステージを人差し指が踊って、文字がフリックで入力されていく。

昨日と今日、私は青野くんに話しかけようと意気込んでいた。ちょっとおめかしもしていたのだ。校則違反だけど。

昨日、こっこたんが『明日も同じ格好で来なよ』って言ったのは、プレミアムというきっかけを作ることを思いついたからではないだろうか。

抜けた炭酸水でコキュンと喉を鳴らす。誤字を見直して、ポンとメッセージを送信。


『これは推測に過ぎないけれど、私のために一生懸命なこっこたんが私は大好きだよ(°▽°)』


いつか青野くんともこんな風に気軽にメッセージが飛ばせたらなぁ。

もう一つ、誰かさんにもメッセージ飛ばしておくか。仕方ないから今日は敬語で感謝しておく。

『てれと君、あちがとうごさいました』


岸蔦照人は、誤字しまくりのメッセージを読んで、一人、えくぼを作ったそうな。





一香は、意外と大きい彼の背中を思い出していた。欠けた月が妙にきれいだった。

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