第4話 その3:『神社』『コンビニ』

 とまあ、こんな感じで幸先良く魔法を続けて成功させることができたわけだけど、後になって思うとこれは運が良かった。

 実は魔法ってのはどんなに調子の良い日でも、どんなに簡単な魔法でも、たとえパートナーに力を借りたとしても、大失敗してしまうことがある。

 魔法を使うときは、使いたい魔法を正確にイメージして、イメージした内容を魔力を使ってなぞるという2つの手順で発動させる。この二つの手順はかけ算のような性質を持っていて、イメージの失敗と構築の失敗が積み重なると思わぬ大失敗になってしまうのだ。

 この次に訪れた神社での魔法が、そんな大失敗だった。病院で巫女さんの修行をしていたことを話したところ、町外れに神社があることを教えてもらったので行った見たのだけど、そこで、まだ日も高いのに丑の刻参りをしようとしている私と同い年くらいの少女に出会った。

 『パルパル……』 と呪文のように何かつぶやいて尋常な様子ではなかったので、魔法で神社にまつられている氏神様を降霊して良くないものを払ってもらおうとしたんだけど、ものの見事に魔法に失敗してしまった。

 現れたのは氏神様ではなくて、赤い髪の小悪魔だった。

 幸いなことに、小悪魔は悪さすることもなく、丑の刻参りをしていた女の子の鬼気迫る勢いでにらまれて、何もない空間に吸い込まれるように消えてしまったのだけど、まさか神様を呼んだはずが悪魔が出てくるなんて……。


 あと、魔法と言えば、実は魔女のパートナーもちょっとした魔法を使うことができる。

 パートナーが使う魔法は、たいしたことができない割にものすごく疲れるらしくて続けては使えないんだけど、魔女が使う魔法と違って必ず効果を発揮する。

 どんな魔法が使えるのかというと、例えば、姿を虎に見せかける魔法なんてのがある。実際の虎に変身するわけではなくて、実体はもとのインコのまま、虎の姿の幻影をまとうだけ。

 神社の次に行ったコンビニで、男の人がモヒカン頭にトゲトゲレザーの服を着た不良たちに絡まれていたところを助けようとして、松風がこの虎の姿になる魔法を使って追い払おうとしたのだけど、見た目だけで威嚇の声が上手く出せなくて、不良達に無視されてしまった。

 こんなちょっとした悪戯くらいにしか使えない魔法でも、松風の体力だと1日に2回も使うとヘトヘトになってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る