第2話 四歳と七歳
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僕が四歳の時空に来た。目線が低い。
お兄ちゃんだけが、お父さんとお母さんに可愛がられている。
四歳の僕の感情も感じる。不思議な気持ちだ。
十七歳の僕は、そんな事は考えていない。そんな寂しい感情も今だけだよと解っているのは、十七歳を経てからの僕だから、伝えようがない。中々もどかしい。
しかし少し苦しい。どうやら四歳の僕は、風邪をひいているようだ。祖父と祖母が看病している。
祖父母の会話から察するに、両親と兄は旅行に行ったらしい。
出発の数日前に僕が風邪をひき熱を出した。当日、熱は下がったけれど大事をとって僕を連れて行かなかったようだ。
両親と兄は二泊の予定を一泊に変更し、旅行に行ったそうだ。
思い出した。僕だけを置いて、家族が旅行に行った事を。その事をしばらくの間、僕は恨んでいたようだ。
そうか、発熱していたのか……それは、行けないよね。
次の日、旅行から帰ってきた兄が「疲れるからもう旅行には行きたくない」と云ったらしく、それから我が家では旅行をしなくなったようだ。
けれども僕は両親の話を聞いてしまった。
「バンドが忙しくなる」と父が云っていた。
「ツアーも増えるから、旅行は厳しいだろう。修(兄の名前)もああ云っていたし、今後旅行は行かない事にしよう」
バンド? 父は趣味でバンドをやっているのかな。それにしては……家族旅行も行かない程入れ込んでいたのだろうか。
〇
僕が七歳の時空に来た。時期はクリスマスのようだ。
この時の僕は、サンタクロースをまだ信じていた様子だ。
いきなり兄が涙目で、僕の方へ走ってきた。
「サンタクロースはいないんだぞ! サンタの正体は親なんだぞ!」と云っていた。
最低な兄だな……弟にそんな事をばらすなんて。
しかし七歳の僕はきょとんとしていた。早口なのもあって、兄の言葉をよく理解していないようだ。この騒動は一体何なんだ。
次の日、兄がラジコンで遊んでいた。僕も遊びたかったけれど、兄が中々貸してくれない。
僕は自分のラジコンが欲しくなったので、父におねだりしに行った。サンタさんがくれるかな、みたいな発言をしていた。
そしたら父は「サンタはいないんだよ」と云った。七歳の僕はとても哀しい気持ちになり、泣いてしまった。
泣き疲れたのか、七歳の僕は居間のソファに寝ていた。同じく居間にいた両親の話が聞こえてきた。
クリスマスイブの夜の出来事らしい。バンドのライブ終わりの酔った父が、兄の枕元にプレゼントを設置していた所、見つかってしまったそうだ。酔っていた父は隠れもせず「メリークリスマス!」と云ってしまったらしい。
信じていたサンタクロースがいなかった事実に加えて、タイミング悪く酔っ払った父親がサンタクロースだった事が拍車をかけた。妙に父親が情けなく見えたのだろう。兄は、やり場の無い怒りを弟である僕にぶつけた。
その場面を、父親が見ていたらしい。自分のミスで兄を哀しみと怒りの渦に巻き込み、さらにその感情を弟にぶつけるという理不尽。
父は結構辛かったらしい。この先、【お兄ちゃんがサンタの正体をばらした】という事実が兄弟仲に悪影響を与えると思ったらしく。
父は、自分が悪役になる事に決めた。最初からサンタがいないと云ったのは父親だ、その事実が兄弟仲をこじらせる事は無いだろうという考えで。
しかし、結局プレゼントは貰えない、若干七歳でサンタの事実を知らされた僕へのフォローは一切無いではないか。
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