第25話


配られてきたものは、あの機械ではなく小さめの自分の名前の書かれた頑丈そうな箱だった。何かを保管するケースのようにも見える。


勝手に籠の中身はCiIだと思っていたのだが、この箱が全員ぶん入っていたらしい。


「よし、じゃあそれを持って俺の言う通りにに移動してくれー!…まだそれ開けるんじゃないぞー。」


そう言うと神埼先生は僕たちをグループ別に座らせた。丁度試験の日と全く同じである。箱の中身が気になるが我慢だ。わざわざ釘を刺されているのだし。


こころさんは箱を傾けたり、振ったりと興味津々なようだった。視線をエミィの方へ移した時、丁度目があった。エミィはにこりと頬笑む。


「やる気満々ね。そんなに代表が嫌なの?」


「まさか、何でもやるからには全力って決めててね。」


「あら、それなら今から立候補したらどう?」


エミィは先生を呼ぼうと手をあげようとしたが、急いで止める。勘弁してくれ。


「あっさり決まったら面白くないだろ?スリルを味わいたいのさ。」


どうにかエミィのペースに呑まれまいと、かっこつけたしゃべり方をしている自分が言える恥ずかしく思えてくる。エミィも若干苦笑いである。


すると、すぐ横でバリっとテープの剥がれる音がした。

こころさんの持っていた箱が一段階剥けている。


こころさんはハッとしたような顔で、急いで箱を自分の後ろに隠した。後ろめたそうな曖昧な笑顔を浮かべている、子供か。


すると、教室のドアが開いた。こころさんがびくりと体を跳ねさせる。なんせ扉がこころさんの真後ろにあったのだから驚くだろう。


「…おはようございます。」


入ってきたのは志帆先生だった。

神埼先生と目を合わせて、心底嫌そうな顔を浮かべている、まるでこれから罰ゲームを受けるかのようだ。


「よし、こっちもこれで揃ったな。説明始めるから静かにしてくれー!」


対照的に、嬉しそうな笑顔を浮かべている神埼先生が教室内を一喝する。


さて、僕は神埼先生の次の言葉に耳を疑った。

そりゃ志帆先生も嫌な顔の一つや二つしてしまうだろう。


「毎回課題は抽選でランダムに決められるんだがな…。」


「今回の課題は、"ねぇ、何で私が怒ってるかわかってる?"に決まったぞ!!」


志帆先生の顔にまた暗雲が立ち込める。

多分僕も似たような顔をしてただろう。

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