第23話
去り際、背中に痛い視線を感じながらも、無事こころさんの元へとたどり着いた。
「急にどうしました?」
多分一連の流れは見ていたのだろう、こころさんはいたずらっぽく笑いながら言った。
「避難させて欲しいなって。」
「ふふ、私でよければ。」
あぁ、落ち着く。ミカさんとは別の安堵が体を包んだ。
こころさんの前の席を借り、腰を下ろす。
「それにしても災難でしたねぇ、見てて楽しかったですけど。」
無邪気にケラケラ笑いながらこころさんは言う。
全く、当事者の気持ちと言うものを考えてもみてほしい。
「ほんと…。開始早々これだと先が思いやられるよ…。」
「ふふふ、また困った時は避難してくれてもいいですよ?」
こころさんは両手を広げて首をかしげる。…天然なのか、わざとなのか。可愛い。
「できるだけ自分の力でどうにかするよ。」
「そうですか、残念です。なら今回だけは特別ですね。……あ、それとエミリーさんから聞きましたか?」
こころさんはそう僕に問いかけた。
多分聞いてない。エミィから貰った情報なんて無い。嫌がらせくらいしか頂いてない。
「多分聞いてないかな。」
「えっとじゃあ…そうですね、いいニュースと悪いニュースの二つあるんですけど…。」
あぁ、よくテレビとかでみるやつだ。
僕は先に好物を食べる派である、後味など気にしない。
「いいニュースからでお願いします…。」
こころさんが言う悪いニュースの度合などわからないが、なんとなく嫌な予感がしていた。
「わ、私にとってのいいニュース何ですけどね?…これからの活動の話になるんですけど、主にグループで別れてやるらしいんですよ、エミリーさんが言ってました。」
ほう。グループで。
受験の時のように…。
…あぁ話が見えてきたなぁ。
「えへへ、でですね。初めの内だけなんですけど。私と空くん同じグループでーす…!!」
こころさんはそう言うとパッと両の手を開いて、種明かしをするマジシャンかの様に明かした。
…議論の余地無くいいニュースである。
となると、悪いニュースって言うのは……。
「…そ、そんなにいいニュースじゃなかったですね!」
僕が思案に更け、返事を疎かにしているのを勘違いしてかこころさんはあたふたと開いていた手を閉じた。
「い、いや?これ以上に無いほどいいニュースだったよ。」
僕の訂正を聞いてか、ホッとしたような様子を見せ、こころさんはニュースの続きを告げる。
「…で、悪いニュース?って言っちゃ悪いんですが。実は私はそれほどそう感じてません!」
もう8割がた予想はついている。確かにこころさんはもう悪いニュースと感じる必要は無いだろう。同性なんだし。
「ぶっちゃけて言います!…そのグループって言うのは受験の時のグループになります!エミリーさんも同じですよ!……空くんにとっては悪いニュースでしたか?」
「あはは…どうかな……。」
まぁ十中八九そうだろうな。
…なるほど最初の内とは言え、授業はグループワークになるのか。
いや別にエミィがどうとかそういうのじゃない。エミィと絡むことによる周りの反応が煩わしいのである。
「あら、どっちもいいニュースじゃない。そうよね、ソラ?……それと勝手に誰の席使ってるのかしら?」
そろそろ来るだろうとは思っていたさ。
僕は立ちあがり、エミィに言った。
「エミィ、君の席だよ。…君とまた同じグループになれて光栄だよ。」
できるだけ皮肉を込めて。
エミィはふふんと鼻を鳴らしながら言った。
「嬉しいこと言ってくれるわね。今度はちゃんとキスしてくれるかしら?」
嘲るような悪戯心を込めて。
「あぁもう!チャイム鳴りますよ二人とも!」
こころさんの仲介が飛んできた瞬間、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます