第20話
エミィのせいでざわつきが止まらない教室を静寂に落としたのは大男だった。
大男はのっそりと立上がり、地を震わす低い声で言った。
「
短く、それだけ言ってまたのっそりと座った。
視線が僕から外れたのはよかったが、また厄介そうな奴である。
今度は対照的にすごく背の低い…。
…あ、今朝のぶつかった女の子だ。ほんとに高校生なのかすら怪しい見た目である。よりにもよって演劇科なのか。
紫ツインテールの少女、いや、幼女は立ち上がった。そして小さな声で呟く。
「…鬼怒祐佳。…よろしくです。」
クラスがまたざわついた。当然だろう。今回に至っては僕も今度はそのざわつきの一因である。
あれで兄妹…!?
あまりにも対照的すぎないか?背なんて2回りほど差があるのだ。かたや大きすぎるし、かたや小さすぎる。
しかし、そんなざわめきなど我関せずといった表情で兄と同じように静かに座った。
全てに関して無関心である。というような雰囲気を醸し出している兄妹だ。頭の整理が追い付かない。どうか普通の人は人は居ないのだろうか。
そこで丁度そんな僕の視界に待ち望んでいたピッタリの男子が立ち上がる。
「
居た。
言っちゃ悪いが全くもって何もかもが普通な人が。
見た目、話し方、振る舞い、身長。
何より友好的な人そうである。
僕の学園生活初めの目標はあの人と友達に成ることにしよう。絶対成し遂げる。肥溜めの鶴、救いだしてみせる。
そんな心意気を胸に路美茂夫男を睨んでいると、一人の男子が大きな音を立て物凄い勢いで立ち上がる。
そしてその男子は自己紹介を始めた。先程の彼とは比べ物にならない程の声量で。
「おはようございます!!
思わず耳を塞いでしまうほどの騒がしさだった。
印象づけるためだか何だか知らないが、何を考えてるんだ…!
やっと鼓膜を震わすものが消えたので、恐る恐る手を耳から離した。しかし僕は甘かった。
また、ガラァ!と椅子が勢いよく床を擦る音がした。
僕はその時点でもう一度耳を塞ぐべきだった。
「おっはよーございまぁああす!!赤壁将です!!どうぞよろしくお願いしまああす!!」
図ったかのようなタイミングでその真後ろに座っていた男がまた大声で叫んだ。
何てバカな兄弟だ…!
赤壁兄弟による、大声量の不意の一撃を喰らわせられた僕らは頭痛がしたように頭をおさえた。志帆先生ですら少し立ち眩みに襲われている。
そんなクラスの様子を見て、赤壁兄弟は満足そうにハイタッチを交わす。
クラス全員の鼓膜が回復するまで数分を要した。
どこかの兄弟のせいで中断されていた、自己紹介が再開される。
そこで見覚えのある後ろ姿が立ち上がった。知っている背中僕は安心した。
「ほんま個性的なやつばっかやなぁ…。」
前に座る兄弟に恨めしそうに前ポツリと呟き、カノは自己紹介を始めた。
「瀬良夏乃です!えっと、趣味は…ゲームとか。アニメとか…見てます。これから皆と仲良くできたら…って思ってま…ちゃうな、思っています?」
どこかちぐはぐな拙いしゃべり方だった。
意図的に関西弁を隠しているのか?
すると、僕の席かの真横に座る女の子がヤジを飛ばした。いつもカノと一緒にいる子だ。
「隠さんでええぞー関西人!」
その一声にクラスがどっと笑いに包み込まれた。
カノは顔を赤くしながらヤジ子を睨んだ。
「うっさいなぁ!折角おしとやかちゃんで行こうと思っとったのに!」
そう言うとカノは大きく息を吸い込んだ。
「改めまして私は瀬良夏乃っ!趣味はゲームとアニメ!気軽に話しかけてきてなー!!」
彼女の思惑からは外れていたようだが、僕の知ってる元気で活発なカノが自己紹介を済ました。
およそ一番大きな拍手が彼女に送られる。
初めに訛りを隠そうとした分、彼女は照れ臭そうに笑っていた。
やっとクラスの自己紹介に終わりが見えてきた。…この時点でこれか。とんでもないクラスになりそうだ。
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