輝石の帝国〜魔王少女物語外伝〜

第5章 女帝の策略

第91話 反撃に向けて

　サリー:人間の皆さんおはようございます、ナレーターのサリーです。ヴェルナース帝国から帰国したイザベラさん、非道な悪は絶対に許さない彼女は歴史改変事件の犯神（はんにん）に対していよいよ反撃に向けて動き始めるのでした。

　魔界時間9:21 帝都女帝執務室

　何者かと通話するイザベラ

　イザベラ:・・・そう、予定通り進んでいるのね・・・それじゃ、プランBへ移行してちょうだい。

　通話を切るイザベラ

　アサギ:例の件ですか？

　イザベラ:ええ、私の読み通り歴史改変事件の黒幕はドラット製薬グループだった・・・というよりは実質、裏で操っていたのはドラット製薬グループ開発部長の一条白緋（いちじょうはくひ）と言った方が正しいわね。

　アサギ:一条白緋というのは何者なのですか？

　宙に浮いた液晶モニターに映し出すイザベラ

　イザベラ:一条白緋、種族は数学と計量を司る女神セシャト族。天界宇宙最高峰の天神大学工学部を主席で卒業、特に評価が高かったのは時空工学のタイムパラドックス理論。工学部を主体として医学部も受けていて卒業後に薬剤師の資格を取っていた事からドラット製薬グループに入社、入社後様々な功績をあげている事から若くして開発部長に就任したってところね。

　アサギ:・・・・

　イザベラ:府に落ちないって顔ね。

　アサギ:はい。一見すると安定した収入を得るためという風に見られますが、何故彼女は時空工学の研究を熱心にしていたのでしょうか？彼女ほどの科学者であればスポンサーも多くつくでしょうに。

　イザベラ:そこが天界と魔界の科学者に対する見方の違いよ。魔界は科学者を重要視してて実力に見合ったランクと待遇があるからスポンサーもつき易いけど、天界はコネでもない限り周知されずスポンサーもつき難（にく）い。

　アサギ:それが天界と魔界に科学力の差が出てるんですね？

　イザベラ:そういう事♪

　アサギ:彼女は時空管理権を天界宇宙に復権させる事が目的なんですよね？それは彼女自身の目的なのでしょうか？

　イザベラ:それは裁判で明らかになるでしょうね。私が気になるのは真の黒幕の正体よ。

　アサギ:真の黒幕の候補は2柱（ふたり）。最近勢力を急速に伸ばしてきている神聖中央銀行（しんせいちゅうおうぎんこう）、その2大派閥の嶋神（しまがみ）副頭取と陸波（おかなみ）常務。そのどちらかですよね？

　イザベラ:もう1柱いるわ。　　

　アサギ:え？

　イザベラ:天界宇宙中央政府金融庁のジミー・コインドル長官よ。彼、長官に就任する前はあの袋井耀蔵（ふくろいようぞう）が代表をしていた反魔界党の議員だったのよ。

　アサギ:反魔界党の議員は相当な裏金を得ていたらしいですね。

　イザベラ:そうね、議員の大半は出世欲に目の眩んだ連中ばかり。袋井耀蔵自身も天界宇宙中央政府の覇権を握るためだけに反魔界・反魔族を掲げていただけだし。

　アサギ:政界の神でもない白緋の犯行の動機は何なのでしょうか？

　イザベラ:そこは今調べてもらってるわ。ま、それもじきに分かるでしょう。

　アサギ:では私達の先ずやるべき事は・・・

　イザベラ:裁判後の黒幕の動きへの牽制よ♪