第2章 3-3 クロタルの誤解
クロタルの眼がまん丸になった。
「いや、その、違います、
本当にうまく云えなかった。クロタルの表情が、少しだけ曇った。
「そうですよね……私は、アナタにずっと失礼な態度をとっていた……それに、ユズミと友人というのも既に御存じなのでしょう? 詳しく教えるわけありませんよね……」
分かりやすい嘘を云っているか、誤魔化していると思われたようだ。桜葉は冷や汗が出てきた。(実際は出ていないが)
「違います! クロタルさんに隠しているわけでは……本当に、本当にこう遣うんです……こう……こんな感じで」
桜葉は必死に右手で斬りつけの、左手で鞘引きの動きをやって見せたが、まさにエア居合だ。体の前で両手を水平に交差するように動かしているだけで、知らない者が見たら泳いでいるようにしか見えない。「鞘を遣う」とは、このほとんどの居合術で使用される、左手による「鞘引き」の技術のことをいう。
しかしクロタル、涙目で唇を固く結んだ。
「そのような戦闘法があるとは到底思えません」
「え……いや」
桜葉、説明を即座に諦める。ガチの武道や武術は、時代劇の殺陣や、アニメやゲームの戦闘シーンと比べて異様に地味である。まして武器も持っていないのに、なにをやっているのか分かろうはずも無い。
「申し訳ありませんでした。もう二度と、不躾な質問はしません」
「い、いいえ、違うんです! ……見ればわかります! あの刀を持ってやっているのを見れば! もうちょっと待ってください!」
「……はい」
クロタルの顔が、また無表情へ戻ってしまった。
聞こえないように、桜葉は深々とため息をついた。
はたして、それから何度か桜葉は工房へ呼ばれ、細かい指示を出しながら協力して「刀」を仕上げていった。木の
「こりゃあ、木じゃなくちゃだめなの」
「だめですね」
バストーラが首をかしげる。
「折れちゃうだろ。金属で固定したほうがよくないか?」
「金属だと、頑丈すぎて逆にこっちが折れるんです……」
桜葉が茎を指さした。弟子どもはポカンとしていたが、バストーラは深くうなずいた。
「なるほどなあ。一種の安全装置か」
「はい、それくらい、衝撃がかかります」
柄の上にナントカドラゴンの喉の革をまいて滑り止めにし、その上から同じくナントカドラゴンの
(うっわ……ほんとにまじでかなり日本刀っぽいやんけ)
(だいたい飾りったって、
口とつたない黒板絵で説明したが、西洋風の剣でも剣身の元を厚く仕上げて鞘に固定するのは同じ概念だったので、バストーラはすぐに理解した。まず、木型を造ってみるという。
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