夜は終わった。太陽が街に昇る。Night is over.The sun rises in the city.

Shou ani

第1話

こんな感じの男を見た事があるか?

身なりも完璧、髪型もピシッと決めて車も完璧?

いや、違うんだ。今君が想像したような人間じゃない。

少しよれよれのジャケット。

Yシャツはもう3日も変えていない。

エリの下には汗でシミができている。

髪型は?今どきのあんなキノコみたいな髪型はしない。古き良きスタイルだ。昔ながらのハリウッドのように。ボロけた愛車のバックミラーに映った自分は目からはやる気が感じ取れずクマが広がり眉とデコを広げている。無精ヒゲは鼻の下からアゴ下まで見事に広がっていた。

片手に電動髭剃りを握りながらハンドルに手を置く。

「くそ、また渋滞かよ、」

映画の様にイカした車で張り込みをしてるとでも?そんなわけないだろう。

もしそんな場面を思い浮かべたなら君はスパイ小説かハリウッドの探偵映画の見過ぎだ。

この仕事は大概、セックスやら女やら浮気やらが多い。浮気した旦那を調べて浮気相手の顔や名前を調べる。

「一日中走り回って、クソどもの訳の分からん話を聞き、気がつけば日が暮れて1日が終わる。」

気にしなくていい、ハリウッドのネタだ。

俺の名前は遠藤信次。

事務所は足立郡に構えている。

ここは良いところだ。四方を汚い川に囲まれヤシの木が生えて太陽は眩しい。何故東京の下町にヤシの木があるかって?俺に聞かれても分かるか。

だが下町も変わりつつある。

産業と言えば大中小、様々な企業が工場を構えていたが最近は大学がここ数年で急増、ヤンキーみたいなアホとヤクザやしがない老人達の街は変わり始めた。今や道端には盗まれたバイクの部品やタバコの吸い殻ではなく、スタバのシェイクの容器が転がっている。

しかし若い人間が増えた分、厄介事も増えつつある。

もし自分の愛車やバイクを5分で盗まれる神業を見たければこの街に来ると良い。コンビニでフライドチキンを片手に店を出る頃には君のバイクは地平線の彼方に消えてなくなっている。

そしてもし怪しい不審者やストーカーにつけられるスリルを味わいたいのなら?この街はまさに最適だ。

だがしかしそんなスリルを好む人間はどこにもいない。

ストーカーに怯えて警察も動かない時人々が頼るのが俺たち探偵業だ。


「あなたが遠藤さん?」


想像していた探偵とは違った。

もちろん変な帽子を被った人を考えていた訳じゃないけど、

少しよれたカーキ色のジャケット。

ネクタイは緩めていてヒゲは今しがた剃った様な感じだ。髪型はまるで普通のサラリーマン。どこか昔っぽいが。


「君がさくらさんだね?」

思えばこれが事件に巻き込まれる入り口だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜は終わった。太陽が街に昇る。Night is over.The sun rises in the city. Shou ani @ami03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ