第31話 ウォルセアでの邂逅2

「それで、アメフット一行はいつ頃到着する予定なのだ?」

ハリーテはエドワードへ尋ねる。


「それがですね……未だ道中半ばのようで10日ほどは見た方が良いかもしれません」


「いったいなぜそんなに日数がかかる? アメフットからここまでそれほど離れておるわけでもないのに」


と、不思議そうに言うハリーテにエドワードは渋い顔で


「馬車がご令嬢の重さに耐えられず壊れたんだそうです……一応、重さに耐えられるように特別に作らせた物だったらしいのですが……」


と答えた。


「それはまた……」


皆何とも言えない顔で呆れかえるが


「良かったですねお嬢様、痩せてなかったらお嬢様も同じ道をたどっていたかもしれませんよ」


と、ウォルターはキャサリンへ小声で話しかけた。


「そうですわね……あのままだったらわたくし、危うくフィルドの恥……ひいてはお父様にご迷惑をおかけすることになっていたのね……道中ずっとウォルターに浮遊魔法をつづけさせるわけにもいかないもの」


としみじみと痩せて良かったと実感した。


「それでですね……特注品なので部品がすぐ手配できない為に遅れる。という事だそうです」


「左様か……ああそうだ、キャサリン嬢」


「はい、殿下。」


「実は折角部屋を訪ねるのに手ぶらで来るのも芸がないと思うてな、キャサリン嬢の為にプレゼントを用意させたのだ。 恐らく別室に運んであると思うので、ぜひ執事殿と見てきてはくれないだろうか?」


とキャサリンへニコリと微笑みながらチラリとウォルターへ目線をくれる。


「はい、申しつかっておりますゆえ御前失礼させていただきます……さぁお嬢様いきましょう」


とキャサリンを先導する。


「お気遣い感謝いたします殿下、では少々失礼させていただきます」


と美しく礼をとってからウォルターへ着いて部屋を出て行った。


パタリとドアの閉まる音を確認してからエドワードは


「お気遣いありがとうございます殿下」


とにこやかにハリーテに感謝を伝えるが、ハリーテは嫌そうに


「誰もいないのだから、その仰々しい物言いはよしてくれ」


と眉をひそめた。


「こういう話し方が染みついていますので、あまりいじめないでください」


とニヤリと笑うエドワード。



「まったく……ところで、アメフットが来ない間に、法王聖下や次期殿下とは接触は図らぬのか?」


「ハリーテ殿下には是非次期様と親交を深めていただきたい所ですが、そこは殿下にお任せします」


しれっと言うエドワード、それにハリーテは


「なんだ、わたくしに次期様を篭絡して来いというのか?」


面白そうにいうハリーテ。


「殿下のお好みに合いそうであれば」


表情も変えずエドワードは言う、それに腕組みして少し悩んだハリーテは


「そもそも次期様がどのような人物かも分らぬうちに、こうやってグダグダ悩んでも仕方あるまいな……わかった!一度面会するとしよう」


納得したようにハリーテは、うむ、と一言頷いた。


「そちらは分かった。 で、例のはどうするのだ?」


「何かやらかしましたか?」


「様子は見ておるが、わたくしの装飾に手を付けたのと随行の侍女だけでなく本神殿の者にもやたら居丈高に振舞っておるようだ」


といいながら眉を顰める。


「あまりにも目に余るようでは我が公国の恥となるゆえ先にせねばならぬぞエドワード」


「そうですね……選抜までで休んでいてもらうほうがいいかもしれませんね……愚者の突拍子もない行動に付き合わされるのはアドルファスだけで沢山ですから……」


と心底嫌そうな顔でエドワードは答えた。その様子を見てハリーテは


「アド兄とは相変わらず仲良しなのだなエド兄!」


と可笑しそうに笑う。


「笑い事ではありませんよ、毎回毎回どれだけ面倒を押し付けられている事やら……」


と珍しくため息をはく。


「それだけエド兄を信用して甘えておるのであろうよ」


とハリーテは優しい眼差しでエドワードを見る。


「あんなのに甘えられても嬉しくも何ともありませんよ……」


げっそりした顔になりつつ答えるエドワードであった。



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