第21話 閑話 レイとルイスの朝
今日も早朝の青空が美しい中、ルイス邸の馬小屋の前でルイスは本部へと出かける準備をしていた。
「ルイス様おはようございます!」
朝から元気なレイ少年を見ながらルイスは
「ああ、おはよう。今日も一緒に本部へ乗っていくか?」
と尋ねる。
現在レイはルイスの養子扱いとなり、後見してもらいながらルイスの従卒として騎士団へ出入りしている。
「宜しいのですか!?」
と目をキラキラさせているレイ少年を、暖かい眼差しで見ながらルイスは用意していた愛馬へレイを相乗りさせる。
カポカポとゆっくり本部へ馬を進めながらルイスはレイへ話かけた。
「そういえば、馬に乗る練習も積極的に頑張っていると騎士団の者たちが褒めていたぞ」
そう言いながら目の前にちょうど見えるレイの頭をポフポフと撫でるように軽く叩く。
子ども扱いされることに未だに慣れないレイは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてはいたが
「まだまだこれから沢山練習をがんばります」
と気合を入れるのだった。
「そうか……ならば一人で乗れるようになったらお祝いに、いい馬を用意してやるからな!」
と、にこやかに言う、それを聞いたレイは慌てて
「そっ! そこまでしていただくわけには!」
と恐縮してしまう。
「何を言うのだ、レイはもう私の息子なのだから何も遠慮などいらぬ。 エルピスの地に眠るアルド殿に、私は魂をかけてレイを一人前の騎士にすると約束したのだからな」
とルイスはレイを見ながらどこか遠い眼差しをする。
「一人前の騎士になった後、もしエルピスで騎士をしたいと思うなら其方の思う通りにしていいのだぞ」
「えっ!? 急に何をおっしゃるのですか!」
レイは驚愕してルイスを見上げる。
「国の名は変わり、住む人も変わっていったとしても其方の生まれ故郷だ。 もし戻りたいのなら止めはしない、だがせめて一人前の騎士になるまでは面倒を見させてはくれぬか?」
少し寂しそうに言うルイスにレイは
「僕はそんなに親不孝な息子に見えるのでしょうか……」
と悲しそうに話始める。
「レイ?」
「僕を息子だとまで言ってくださるルイス様になんの御恩も返さないで故郷へ戻ったら、それこそ父上にもルイス様にも親不孝を働くことになってしまいます……それに僕を助けて下さったエドワード様やアドルファス様にも不義理を働く恩知らずだとそしられても仕方ありません……そんな人間になれとルイス様はおっしゃるんですか……?」
と目に涙を一杯にためている。
「レイ、私が悪かった……。 だが一つだけ言わせてくれるか? 其方は恩になど縛られずとも好い、心から進みたいと思う道を行ってくれ、約束だぞ?」
と、じっとレイの顔を見た。
「分かりました。 お約束いたします!」
そう答えるレイの瞳は自らの道をすでに決めている、決意にあふれるものであった。
「では、困らせてしまった詫びに午後少し時間が空いてるから鍛錬をみてやるぞ」
と、いたずらっぽく笑うルイス。
「本当ですか!」
とまたキラキラと目を輝かせるレイへ
「あぁ、本当だとも! 約束だ。 だからその時間まで今日はエドワードの使いを頼まれてやってくれ」
「はい! かしこまりました!」
と元気な声を街中へ響かせるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
・ちゃんとレイ君のその後も書いておいた方がいいかと思いまして、閑話のような形ですが書かせていただきました。
なお、その後鍛錬してたレイ君とルイス様は、おい!養成ギブスつけようぜ! とはしゃぐアドルファスに捕まった模様です。
ルイス「おお……懐かしいな」
レイ「ルイス様これつけて強くなったのですか!……なら僕もがんばります!」
それを止められる騎士団員は存在しませんでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます