第29話 恵美子の危機
恵美子は、遅い夕食を取りに職員食堂へ行った。
テレビでは、相変わらず銀行の様子を報道している。昼間仕事に集中していた彼女は、この事態が単なる銀行強盗事件ではなくなっている事に気づかずにいた。
画面がにわかに騒がしくなってきた。どうやら、銀行から人質が二人出てきたらしい。女性の肩を抱いて、男がやさしく寄り添いながらゆっくりと歩いている姿が映し出される。ニュースキャスターは、絶叫していた。
二人は、警察に保護されると画面から消えていった。しかし、程なくすると男だけまた出てきて、銀行に向かって歩き出していた。
『何があったのだろう』
ニュースを見る恵美子も不思議に思って、しばしキャスターの言葉に耳を傾けていた。その時、不意に男が彼女のテーブルの前に現れテレビの視界を遮った。
「あんた、津山恵美子さんかい?」
男は、恵美子が最も嫌い恐れる人種の匂いがした。それは、また彼女に過去の悪夢を思い出させた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます