第24話 黄の受難
めったに拭き掃除をしない黄の店の壁に、唾液混じりの血が飛ぶ。床にもんどりを打った黄の顔は、見る影もなく腫れ上がっていた。
灰色のコートを身に纏った、どちらかといえば痩せぎすの男は、黄の奥襟をつかみ、引き上げるともう一度椅子に座らせた。
「だから、私何も知らない…」
必死の訴えにかまわず、灰色の男は黄の利き腕を取って指を掴むと、鋭くねじ上げた。小指と薬指が鈍い音を立てた。二つの指は、根元からひし曲げられ、あらぬ方向へ向いていた。
「ぎゃーっ!」
黄の叫び声で、彼の店に並ぶ輸入雑貨が震えた。それから灰色の男は何もしゃべらず、ただ黙々と、黄の指を折っていく。
ついに、黄はその痛さに耐えられず、すべてを話した。しかし、灰色の男は、それでも指を折ることを止めようとはしなかった。すべての指が折られ、そして最後に彼の脊椎が折られ、叫び声すら出なくなった時点でようやく止まった。
男は、あたかも、動かなくなったおもちゃに飽きた子供のように、床に崩れた黄に見向きもしないで店を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます