第22話 銀行のあり様④
「サンキュー。ところで、今何時だ?」
「ちょうどお昼の十二時よ」
麻里が行内の時計を見て答えた。
「教官、港北埠頭まで車でどのくらいかな?」
「渋滞がなければ、車で飛ばして、三十分くらいかしら…」
「そうか。まだ時間があるな…。みんなには悪いが、しばらく、ここで時間調整する。腹が減っただろう。何か食いたいものがあれば外にいる警察に頼んでやるぜ」
「馬鹿言ってるわ。私たちが頼んで欲しいのは、あなたをさっさと捕まえちゃって欲しいってことよ」
「さっきからおまえ…。本当に気が強いな。あんたを嫁さんにしたら大変だろうな」
「余計なお世話」
麻里の口調に、津山も押され気味だった。
人質たちは銃口を向けられるストレスは無くなったものの、まだ解放されない自分たちの境遇をあきらめて思い思いの場所に座り込んだ。
「麻里ちゃん。僕は、一度だって大変だって思ったことないよ」
修が小声で言った。
「ありがと…」
「…そんなことより、こんな事態になっても何もできない自分が情けない。本当にごめんね」
「いいのよ。誰かみたいに、部下を置き去りにして、自分だけ逃げなかっただけで、十分嬉しいわ」
麻里は優しく応えた。
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