第15話 服部のボヤキ
石川刑事は、刑事部屋に入ってくる服部の姿を見ると、幾つかの書類を持って近づいた。
「服部さん。なんか分かりましたか」
「そりゃあ俺のセリフだ」
「失礼。報告書があがりました。鑑識が現場で言っていたのとそう大差ありません。とりあえず自分は米軍に銃の確認に行ってきます」
そう言って、石川は勇ましく上着を羽織った。
「なあ、石川。お前、俺の所に来てもう何年になる」
「なんですかあらたまって。4年と3ヶ月ですよ、服部さん」
「お前もいい年だろう。結婚はしないのか」
「自分みたいな家業では女は寄りつきませんよ。解ってるでしょ」
石川は明るく笑って答えた。
新米だった石川を、服部が預かり今まで育て上げてきた。何度も何度も失敗を重ね、今では自分が何をしなければならないかを充分に理解する一人前の刑事に成長した。息子のない服部にしてみれば若い石川は、それに一番近い存在であったかもしれない。今夜来る若造に比べれば、彼を麻里の婿として迎え入れる方がよっぽどいい…。
「ところで石川。来る途中で交機がやけにあわただしかったが何だ」
「ええ、自分も良くわからんのですが、なぜか港北自動車練習所の教習車が市内を暴走しているらしいですよ」
「なんじゃそりゃ」
突然署内警報が鳴り響いた。
『三友銀行港北支店で強盗事件発生。犯人は職員を人質にして行内にとどまっている模様。刑事二課は至急現場支援へ向かえ。尚、犯人は拳銃を所持。繰り返す犯人は拳銃を所持している』
「おやじさん。三友銀行港北支店と言えばお嬢さんの勤めている銀行じゃないですか」
ふたりはしばし見つめ合うと、争うように部屋から飛び出してった。
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