傅亮7  それ辞無きか  

劉義隆りゅうぎりゅう傅亮ふりょうを処刑するため、

まずは呼び出そう、ということになった。

宮中のこの動きは、密かに

傅亮に届けられた。


そこで傅亮、おばの病を理由に一度

城内より退出。合わせて徐羨之じょせんし

劉義隆の意図を伝える。


そして自らはそのまま車に乗り、

ついにはその馬に直接乗り、

六年前に死んだ兄、傅迪ふていの墓のところへ。


墓前で傅亮は、何を思ったのか。

ともあれ、郭泓かくおうという人に捕まった。


連行され、処刑場の近くにまで至る。

すると、劉義隆よりの伝言が届いた。


「傅亮殿は、朕を迎えに、

 わざわざ江陵こうりょうにまで出向かれた。


 その誠意に免じて、

 子にまで累を及ぼさぬことを約束する」


傅亮は伝言を読むと、嗚咽する。


「わしは先帝よりお引き立てを賜り、

 遂にはこの国の将来を託された。


 昏君を廃し、名君を立てる。

 これは社稷の計であろう。

 いわば先帝の遺命に従ったのだ。


 だと言うのに、罰されねばならんのか。

 もはやわしに、何が言えよう」


こうして、傅亮は処刑された。

その妻子は、建安けんあんに追放された。




帝將誅亮,先呼入見,省內密有報之者。亮辭以嫂病暫還,遣信報徐羨之,因乘車出郭門,騎馬奔兄迪墓。屯騎校尉郭泓收之。初至廣莫門,上亦使以詔謂曰:「以公江陵之誠,當使諸子無恙。」亮讀詔訖曰:「亮受先帝布衣之眷,遂蒙顧托。黜昏立明,社稷之計。欲加之罪,其無辭乎。」於是伏誅,妻子流建安。


帝の將に亮を誅せんとせるに、先に呼びて入りて見んとせば、省內に密かに之を報ずる者有り。亮は嫂が病を以て辭して暫し還じ、信を遣りて徐羨之に報ぜしめ、因りて車に乘り郭門を出で、馬に騎り兄の迪の墓に奔る。屯騎校尉の郭泓は之を收む。初にして廣莫門に至り、上は亦た以て詔して謂わしめて曰く:「公の江陵の誠を以て、當に諸子は恙無さしめんとす」と。亮は詔を讀みて訖して曰く:「亮は先帝より布衣の眷を受け、遂には顧托を蒙る。昏を黜し明を立つるは、社稷の計なり。之に罪を加えんと欲せるは、其れ辭無きか」と。是れに於いて誅に伏さる、妻子は建安に流さる。

(南史15-4_衰亡)

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