徐羨之2 重き言葉    

劉裕りゅうゆう後秦こうしん討伐を言い出したとき、

ほとんどの家臣が反対した。


その中にあって、徐羨之じょせんしはだんまり。 


おいお前、なんで太尉たいい止めねえんだよ。

そう突っ込まれたところに、

徐羨之は答える。


「んー、正直、わたし自身については、

 身丈に合わないほどの高位を頂戴し、

 満足しているのです。


 なのでここから先に、

 必要以上に昇進したい、

 という気持ちもありません。


 それに青州も荊州も平定されており、

 この晋の威光は、すでに

 広く行き渡っています。


 辺境のゴミきょう族なんぞのいちびりに、

 なんで気を揉まなきゃいけないのか、

 という気はするんですね。


 しかし、このゴミに劉裕様が

 日々、心を煩わされておられる。


 劉裕様のお心を思えば、

 いつまでもゴミを放置したままでいる、

 というのは、あまり良いこととは

 思えないのですよね」


そして、結果として北伐の軍は起こった。

待って、待って、

こんなんめっちゃ侫臣ムーヴですやん……



ともあれ徐羨之、劉裕配下として

ただならぬ存在感だったようである。


劉穆之りゅうぼくしの死後、

劉裕視点では、劉穆之レベルの

行政業務を処理できるのは、

王弘おうこうである、と感じていた。


けれども、そんな劉裕に対し、

謝晦しゃかいが言っている。


「王弘のやつはちょっと軽率すぎます。

 徐羨之には及ばないでしょう」


そのため劉穆之の後任は

徐羨之となるのだった。




高祖議欲北伐,朝士多諫,唯羨之默然。或問何獨不言,羨之曰:「吾位至二品,官為二千石,志願久充。今二方已平,拓地萬里,唯有小羌未定,而公寢食不忘。意量乖殊,何可輕豫。」穆之卒,帝欲用王弘代之。謝晦曰:「休元輕易,不若徐羨之。」乃以羨之為丹陽尹,總知留任,甲仗二十人出入,加尚書僕射。


高祖の北伐を欲したるを議せるに、朝士の多きは諫ぜど、唯だ羨之は默然とす。或るもの何ぞ獨り言ぜざるを問わば、羨之は曰く:「吾れ位は二品に至り、官は二千石と為りたれば、志願は久しく充つ。今、二方は已に平らぎ、地の拓かること萬里なれど、唯だ小羌の未だ定まらざる有り、而して公は寢食にても忘れず。意を量るに殊に乖きたるに、何ぞ豫を輕んずべからんか?」と。穆之の卒せるに、帝は王弘を之の代りに用いんと欲す。謝晦は曰く:「休元は輕易なれば、徐羨之に若かず」と。乃ち羨之を以て丹陽尹と為し、總留任を總べて知らしめ、甲仗二十人を出入し、尚書僕射を加う。

(宋書43-2_言語)



宋書+南史です。


後々の徐羨之評にもつながる言動がここで見えています。そいつと対比すると、謝晦ェ…の王弘評が、実に見事なコントラスト。お前はお前でだいぶ軽率だったじゃねーかよ謝晦、とは言いたいところですが、徐羨之を見習ってここは黙り込むことにしますネ☆

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