劉裕49 誅滅―劉毅   

江陵こうりょうに駐在し、五斗米道ごとべいどうの軍を

見事に防ぎきった男。

劉裕りゅうゆうの(有能な方の)弟、劉道規りゅうどうき


五斗米道戦での心労がたたったか、

病を得、江陵での長官業務が

難しくなってきた。


そこで、劉毅りゅうきが代わりに

江陵に向かうことになった。


ただこの劉毅、桓玄かんげん打倒クーデターに際し

京口けいこう広陵こうりょうで立てた功績は

劉裕に匹敵する、と考えていた。


表向き劉裕を立てるふりこそしていたが、

内心では不満を抱いていたのだ。


元々才覚に恵まれ、志高く、

かつ、それらに誇りを抱いていた男である。


そのような男であるから、

朝廷には少なからぬ劉毅シンパがいた。


中でも名族の謝混しゃこん郗僧施ちそうしとは、

常々親交を深めていた。


劉毅は前任地より新任地へ移る際、

前任地の幕僚を、引き続き新任地でも

用いたい、と申請。


加えて、一人では回しきれないから、と

郗僧施を自らのサポート役として

招きたいと申し出てくる。


さらに、江陵に至った劉毅、

今度は病を得たと称し、

いとこの劉藩りゅうはんを招聘したい、

とまで言い出した。


こうなれば、劉毅が荊州で

反旗を翻すのも時間の問題だ。


なので劉裕、裏では

劉毅打倒の計画を練りつつも、

表向きは劉毅の申請をすべて受理。


が、劉藩と謝混については、

異動の話を持ちかける名目で召喚すると、

そのまま投獄し、獄中で殺す。

そして逆賊劉毅の討伐を宣言、出撃した。


なお劉毅平定後の江陵のボスとして

司馬休之しばきゅうしを引き連れる。


また(無能な方の)弟、劉道憐りゅうどうれんには

京口を守っているよう言いつけ、

諸葛長民しょかつちょうみんには建康の太尉府、

つまり劉裕の本拠地を守らせる。


ただし、諸葛長民のもとには、

劉裕が最も信頼する腹心、

劉穆之りゅうぼくしを合わせてつけた。

補佐という名の監視役である。


こうして出撃した劉裕であったが、

戦いは先発隊の王鎮悪おうちんあく、及び蒯恩かいおん

決着をつけてしまった。


まともに迎撃体制も取れていなかった

劉毅軍は、またたく間に壊滅。


劉毅とその郎党は、

皆殺しとなった。



征西將軍、荊州刺史道規疾患求歸,改授豫州刺史,以後將軍、豫州刺史劉毅代之。毅與公俱舉大義,興復晉室,自謂京城、廣陵,功業足以相抗。雖權事推公,而心不服也。毅既有雄才大志,厚自矜許,朝士素望者多歸之。與尚書僕射謝混、丹陽尹郗僧施並深相結。及西鎮江陵,豫州舊府,多割以自隨,請僧施為南蠻校尉。既知毅不能居下,終為異端,密圖之。毅至西,稱疾篤,表求從弟兗州刺史藩以為副貳,偽許焉。九月,藩入朝,公命收藩及謝混,並於獄賜死。自表討毅。又假黃鉞,率諸軍西征。以前鎮軍將軍司馬休之為平西將軍、荊州刺史,兗州刺史道憐鎮丹徒,豫州刺史諸葛長民監太尉留府事,加太尉司馬、丹陽尹劉穆之建威將軍,配以實力。壬午,發自京師。遣參軍王鎮惡、龍驤將軍蒯恩前襲江陵。十月,鎮惡剋江陵,毅及黨與皆伏誅。



征西將軍、荊州刺史の道規は疾患し歸らんことを求め、改めて豫州刺史を授け、後將軍、豫州刺史の劉毅を以て之に代る。毅と公は俱に大義を舉げ、晉室を興復せば、自ら京城、廣陵,功業を以て相抗せるに足ると謂ゆ。權事を公に推したりと雖も、而して心にては服さざりたるなり。毅は既にして雄才大志を有せど、自らに厚く矜許し、朝士の素望せる者は多く之に歸す。尚書僕射の謝混、丹陽尹の郗僧施と並べて深く相い結ぶ。西の江陵に鎮せるに及び、豫州が舊府を多く割きて以て自隨とし、僧施を南蠻校尉に為さんと請う。既にして毅の下に居せる能わざるを、終には異端を為さんことを知らば,密かに之を圖らんとす。毅の西に至れるに、疾の篤きを稱し、表して從弟の兗州刺史の藩を以て副貳に為さんと求めたれば、偽りて許す。藩の入朝せるに、公は命じて藩及び謝混を收めしめ、並べて獄にて死を賜う。自ら毅を討たんと表す。又た假黃鉞にて諸軍を率い西征す。前鎮軍將軍の司馬休之を以て平西將軍、荊州刺史と為し、兗州刺史の道憐を丹徒に鎮ぜしめ、豫州刺史の諸葛長民に太尉留府事を監ぜしめ、加えて太尉司馬、丹陽尹の劉穆之を建威將軍とし、配して以て力を實せしむ。京師より發し、參軍の王鎮惡、龍驤將軍の蒯恩を遣りて前に江陵を襲わしむ。鎮惡の江陵を剋したるに、毅、及び黨與は皆な誅に伏さる。


(宋書2-4_仇隟)




この辺については、別の場所で考察してます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881962323/episodes/1177354054886820723

いや、てゆうかこのエピソード、劉裕を最大限に称揚するはずの宋書の記述ですら、大義名分の薄さがはんぱない。

晋書劉毅伝、宋書王鎮悪伝と併せ読むと、ますますもってやばたんなのです。

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