その2
坂口くんが好きです。
そう言って坂口くんと付き合い始めてからもう3ヶ月が経った。
坂口くんとは中一の時に同じクラスだった。出席番号が前後だったし、その頃はそれなりに仲が良かったと言える思う。小学校卒業と同時に引っ越して来たそうで、まだ友達がいないんだと言って話しかけてくれた。
でもその年の夏休みが明けたあたりから坂口くんにも男の子の友達ができてだんだん疎遠になってきて、中二のクラス替えで別のクラスになってからは特に交流はなくなった。
高校に入学して同じクラスに坂口くんがいた時は驚いた。その時は同じ高校に進学することも知らないくらい、坂口くんになんて興味がなかったから。今思うと嘘みたいなことだけど。今は大好き。
相変わらず出席番号は前後同士だったのと、他にクラスに同じ中学出身の人がいなかったので割と話すようになった。周りの子たちが他の子との距離感を測りながら接する中、男の子と仲良く話せるのはなかなか気分が良かった。
高校ってなんかイメージと違った、もっとジュウジツした学校生活を思い描いてた。なんてことをみんな言ってるのをよそに、私はそのジュウジツした学校生活を手に入れられた。
坂口くんのおかげだ。
体育祭が終わった5月ぐらいから坂口くんは私の彼氏になった。
朝一緒に教室に入る時とか、お昼ご飯を一緒に食べてる時とか、友達の誘いをデートを理由に断る時とか、クラスのみんなが羨ましそうな目で見てるのが分かる。
坂口くんはクラスの人の前で手を繋いだりするのは嫌だっていうけど、本当は嬉しいんだって知ってる。バカップルとか言われた時の私も、怒る格好をしてみたりはするけど本当は嬉しいのだ。
夏休みに入ってからもずっと坂口くんと一緒にいる。
私がバイトがある時、坂口くんは迎えに来て家まで送ってくれる。今はその帰り道がとても幸せなのだ。バイト先はお花屋さん。たくさんのお花を背景に手を振る私はきっとキラキラして見えるに違いない。
駅の方に向かいながら私たちはたくさん話をする。週末のデートの予定とか、来年も同じクラスになれるかなとか、大学も一緒に行こうねとか、結婚した後のこととか。
坂口くんは静かに聞いていてたまに「ふーん」と言うだけだけど、この時間が私にとってこの上なく大切なものに感じられる。
長続きの秘訣?
坂口くんのことをちゃんと好きだってのを言ってあげることかな。坂口くんが自信をなくしたり、他の男子に嫉妬したりしたらいけないから。
しばらく会えない時は電話してでも言ってあげる。何回も同じように言ってると飽きちゃうかも知れないからちょっとずつ言葉を変えながら。
好きだよ、アイラブユー、ずっと一緒だよ。
今日はどうしよう。
初心に戻って「坂口くんが好きです」でいっか。
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