第6話「復讐の刃」
「では、始めるか──」
「始めようかッ」
剣を構えた両者。
スススと互いにすり足で間合いを取っていく。
その最中に、グラウスは近衛兵団長の傍らに近づくと、
「その前に、な───」
そっと、グラウスが手を
さらに、
その後、彼がパチンと指を弾くと、なにもなかった空間にがポカリと穴がと開いてその中に近衛兵団長が消えた。
「ふ……。お優しいことだね」
「これでも王なので、な」
──なるほど、空間魔法か……。
伊達に大賢者といわれるだけはある。
そして、邪魔者はいなくなったと言わんばかりに、グラウスは聖剣を構えた───。
「いくぞ、ザラディン。──……見せてもらおうか。
はぁ!!!
ブンッ───と、一気に距離を詰めてザラディンに斬りかかる。
こ、これは、勇者剣技──『稲光』?!
は、はやい!?
「クッ!」
銃を手放したザラディンは、背の二刀を抜き放ち交差させる。
そこにグラウスの剣が落ちた!
ギャァァン!!
「ハッ! どうしたザラディン! それは、オーウェンの技じゃないか」
剣を交差させての防御とカウンターの一体技───『滝落とし』
「…………そうだ! 見せてやる
一刀は防御のまま、
もう一刀でのカウンター。
──それが、オーウェンの技『滝落とし』だ!!
だが、グラウスはそれ見て哄笑する。
「くははは! お前に勝てなかった男の剣技など──俺に効くかぁぁぁああ!」
聖剣を滑らせたグラウスはザラディンのカウンターをなんなく躱すと、逆にその剣を合わせて、────受け流す。
「く──」
ススーと聖剣が滑り、ザラディンの腕を狙う。
こ、これは──、
勇者剣技…………『川流し』!?
グラウスの技に気付いたザラディン。
そして、勝利を確信したグラウス───、
「もらったぁぁぁあ!」
かつての模擬戦を彷彿させる動きに、グラウスは勝ちを確信した。
そう。
『勇者』に勝ったのだと──……。
「………………がっかりだよ、グラウス」
しかし、そんな彼の耳に届いたのは憐みすら感じさせるザラディンの声。
(な、なにを?)
一瞬、頭が混乱したグラウスは、刹那のさなかでザラディンと会話し、顔を合わせる。
ザラディンの余裕な声の意味が分からない。
だ、だって───。
グラウスの剣は、今まさにザラディンの腕を切り落とさんと迫る………「え?」
「真似しただけかい?…………それじゃ、オーウェンには一生敵わないよッ」
ば、ばかな───!!
この流れなら、確実に俺の……────勝ち。
「……オーウェンはね、常に鍛錬していたよ。魔王を討伐するその日までずっと──」
すぅぅぅ……。
──────見せてやるッ。
『波乗り』ッッ!!
受け流され、そして逸らされたザラディンの剣。
しかし、逸らされた分…………もう一刀にはその余った力の───遠心力が乗る。
そう。
カウンターのカウンターは囮……。
──
「ば?! ざ、ザラディぃぃぃぃぃン!」
──────ズバァァッッ!!!
肩から胸にかけての袈裟切りに、
グラウスが血をブシュゥゥウと噴き出す。
───彼女の放った一刀は、……致命傷だった。
「見たかい? これが真の勇者の剣技さ」
「ごふっ」
どさ……。キャリン、キャリン──キャリィィン……。
そして、グラウスと聖剣が床に転がり、ジワジワと血が広がっていった。
「ぐ……み、見事だ──さすがは『勇者ザラディン』……」
ふ…………。
「違うよ。僕は
そうだ。それでいい。
だから、
「───本当の勇者はあの二人だ。……カサンドラとオーウェン。彼女が……彼らが、彼らこそが、本当の本物の勇者だ!!」
この復讐は、彼らが望んだわけじゃない。
望むものか。
復讐なんて、死者が語るはずもない。
だけど、彼らの無念は分かる……わかってしまう。
毒をくらい、犯され、切り刻まれ、あざ笑われ……全てを奪われ、死後も蹂躙される。
───でも!!
それでも!!!!
彼らは死んだ。
死んでしまった!!!
もう、どこにもいない!!!!
──────だから!!
だから、
この復讐は──────。
全て、生まれ変わってしまったザラディンの独りよがり。
そう、
「────生まれてきてゴメンね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます