第6話2部 カエルの唄が、多重に響いて
「いやまじでまじでやべえってあいつら」
カワズの唄が。
「何でも筋肉で解決とは脳みそ筋肉かよマジやべえって」「いやまじでまじでやべえってあいつら」
聞こえてきたら。
カワズの唄が。
「ほら俺らって頭脳労働者? みたいな? 話合わないっての?」「何でも筋肉で解決とは脳みそ筋肉かよマジやべえって」「いやまじでまじでやべえってあいつら」
ゲロゲログワッグワ
聞こえてきたら。
カワズの唄が。
「あいつらと一緒にされるのマジ勘弁? みたいな?」「ほら俺らって頭脳労働者? みたいな? 話合わないっての?」「何でも筋肉で解決とは脳みそ筋肉かよマジやべえって」「いやまじでまじでやべえってあいつら」
ゲロゲログワッグワ
ゲロゲログワッグワ
聞こえてきたら。
カワズの唄が。
「いやまじでまじでやべえってあいつら」「あいつらと一緒にされるのマジ勘弁? みたいな?」「ほら俺らって頭脳労働者? みたいな? 話合わないっての?」「何でも筋肉で解決とは脳みそ筋肉かよマジやべえって」「いやまじでまじでやべえってあいつら」
カワズの唄が。
ゲロゲログワッグワ
ゲロゲログワッグワ
聞こえてきたら。
カワズの唄が。
「ああもう! 喋るのは誰か一人にしてくれ!」
周囲をとりかこむ
十数人が思い思いに好き勝手、ゲコゲコやっている。
身長は腰の高さくらい。
見た目は完全に二本足で立った蛙。
小人サイズのカエルが跳ね回る姿は、ファンタジーというかメルヘンで。
実に鳥獣戯画で微笑ましい。
頭の回りが早くてお喋りで、陽気でよく笑いよく喋る。
そしてよく喋る。
よく騒ぐ。
好き勝手騒ぐ声はうるさい事この上ない。
田舎の田んぼもそういやこんな感じだった。
こっちも大体そんな感じだ。
「とりあえず、誰でもいいんで説明出来る代表者一名」
「じゃ、俺」
「いや俺」
「俺俺」
「俺でしょ?」
「俺が俺が」
一事が万事こんな感じ。
実にやかましい。
「
「殺気立った
トロウル村に立ち寄った後のこと。
敵対意識を露わにしている
なので、竜皇国の名家の出のフルルツゥクに来てもらって、説得を願う。
そんな流れになった。
ということで、フルルツゥクが来る前に、離散したという
集落を見つけるのは簡単だった。
割と近くに固まっていたし、何よりゲコゲコうるさいからすぐ分かった。
定住する住処は無く、河原や水の中にまとまって、そこが村のようになっている。
今話しているのも、砂利そのままの河原だ。
ここまでは問題は無かった。
問題はその後だ。
会話にならない。
いや、なっているんだが、まとまらない。
皆が好き勝手話して何が何やら分からない。
「俺らは喋るの好きで我が強いからなぁ」
「からなぁ」
「しゃあないしゃあない」
「よく言われるよな。」
「我が強いからなぁ」
「後、お喋りだからなぁ」
収拾がつきません。
まあ、仕方ない。
「とりえあず、君。君がこの場の代表者。他は黙っているように」
近場の一人を指名する。
ぴょん、と一際大きい岩に飛び乗って、直立姿勢で敬礼をする。
「ういうい。何でも聞いて下さいっすよ」
「えー。なんでこいつなんすか?」
「不公平っすよ!」
「黙れって言われただろ」
「お前も黙れよ」
「黙ってたら注意出来ねえだろ、それくらい分かんねえのかよ」
「黙れって言われたんだから黙らなきゃ駄目だろ」
「それじゃお前もなんで喋ってるだよ」
「黙れよお前ら」
「お前も黙れよ」
ああもう。
いつまでも進まない。
「一応。事の経緯はトロウルから聞いているんだけど。君たちからも詳しく聞きたい」
複数の関係者から話を聞くのは、調査の基本だ。
人間は自分の都合の良い方に物事を見るから。
「まず、移民団の代表をトロウルがやるって決まったらしいけど」
「いやいや。それから間違いなんすよ。つうか、脳筋どもがまじふざけやがってさ」
最初からつまずいた。
トロウルの話だと、一度代表を決めたものの、後になって他種族が文句を言い出して離散。
と言う事だった。
まあ、そんなにトロウルに都合の良い経緯では無いとは思っていたが。
「代表者? ってか、お迎えの責任者? そんなのは要るって話にはなったんすよ。で、それはいいんすけど。それならほら。頭脳労働っての? 交渉担当っての? そういうのは俺らの仕事じゃないっすか」
じゃないっすか。
とか言われてもよく分からないです。
「つっても、連中納得しねえんすよ。連中アホだから。指示する奴が偉いだろうとか言い出すんすよ。それで、相撲で決めようぜとか抜かすんすよ。マジ意味分かんねえ」
ハァ。と、
確かにそうだ。
そもそもでかいトロウルや
「やるぞやるぞ。多数決だ二対一だ。みたいな事言い出して。話しになんねえんで逃げてきたって訳っすよ」
「そりゃあまた。ご愁傷様で」
「市長さんはちゃんとしてくれるんすよね? バカな事言い出して威張らなけりゃ、俺らは言う事聞くっすよ?」
「その点は大丈夫。ちゃんと向いた仕事を用意するよ」
俺の腰の低さは折り紙付きだ。
いつだって、必要ならば土下座をする準備がある。
「それなら文句はねえっすわ。だよな、みんな?」
「おう」「問題なし」「賛成」「つうか、あの脳筋じゃなけりゃなんでもいいわ」
やれやれ。
協力的な人たちで助かった。
「物分りが良いでしょう? 来るべき時のため、わたくしが手配して移民させた者たちですからね。わたくしの功績ですよ」
そして、ベッピンのドヤ顔である。
「そのベッピンさんが集めた人達が、どうしてこんなに簡単に分裂するんですかね」
ちょっと、人選に問題があるんじゃないのだろうか。
我が強すぎるとか。
「それは簡単な話なのですよ」
嬉しそうに。
楽しそうに。
ベッピンさんは歯を見せて笑う。
「トロウルと
…………。
「……それは……何故?」
「歴史的な話ですね。生来的にも合わないようですが」
いや、そうじゃなくて。
「そんな人達を、なんで一箇所に集めたのは何故?」
別々の集落にするとか。
時間差で移民させるとか。
なんかもっと、やるべき事があっただろうに。
「災いの種があった方が楽しいでしょう?」
エルフという種族を、俺は二人しか知らないけれど。
大変に厄介な連中だという偏見が、今の俺に出来上がりつつある。
しかもどうも。
それが正解らしいのが。
なんか、酷い話しだなぁ。
清く正しく美しいエルフの姫君とか。
どこかに存在しないもんですかね。
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