ーーが家で冷えてる。(30分)

お題:冷たい理由


 私はいつも、定時きっかりにデスクを立つ。

「アサヒちゃんお疲れ様、良かったらこのあと飲み行かない?」

 花金だからかな。同期の男の子に誘われたけど、

「ゴメン、急ぐの」

 と断りを入れる。

「冷たいな〜彼氏が待ってるの?」

「そんなとこ」

 ゴメンね、ともう一度両手を合わせ、外へ。

 駅と会社は近くて楽だけど、ギュウギュウの満員電車に揺られて帰るのはやっぱり大変。それでも、家に帰ってからのご褒美を思えば頑張れる。心うきうきわくわく。

「たっだいまー!」

 家に着くなり荷物を放り出し、服もポンポン脱いで、メイクを落とし、お風呂へ。タイマーで熱々のお風呂が沸いているので、極楽だ。

「はぁ〜。あったまる〜」

 体を温めたら髪を洗い、トリートメント。数分置いてから流し、次は体。洗い終わったら、今日はスクラブもしちゃおう。洗顔はその後。全部終えたら最後にもう一度湯に浸かってのんびりしつつ、パック。女の子のお風呂は長いのだ。

 そうしてツルピカになってお風呂から上がり、丁寧に髪を乾かしたらやっとのことで、ご褒美タイム!

 冷蔵庫からビールと彼の首を取り出し、テーブルに並べる。ビールは缶を開けてグビッとそのまま一口。あーー!美味しい!!

「ほんと、仕事の後のビールって最高!あなたの気持ち、よく分かる」

 彼の唇に口付ける。ずっと冷蔵庫の中にいたので、とてもひんやりしていて、お風呂で火照った肌に気持ちいい。

 私来週も頑張るね。満員電車も、なかなか減らない事務仕事も、同僚とのコミュニケーションも全部頑張るね。

 私がちゃんと仕事に行くから、あなたは家で冷えてていいよ。

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