今年のぷにぷに(15分)
お題:今年のぷにぷに
毎年春に《ぷにぷに》を花壇に植えると、夏には《ぷにゃぷにゃ》を収穫することができ、半分は残しておいて、秋には《ふにふに》を、冬には《ふりふり》を刈り取ることができる。
さて。今年は気温が高すぎたために、植えた《ぷにぷに》のうち、半分しか芽が出なかった。妹は《ぷにゃぷにゃ》が大好物なので、今年は種として必要になる以外は全て《ぷにゃぷにゃ》として収穫してしまおう、と主張した。僕は反対である。
《ぷにゃぷにゃ》は確かに美味しいが、食べて仕舞えばそれで終わりである。僕はそれより、毎年姉さんが《ふにふに》と《ふりふり》で新しくつくるドレスを見るのが好きなのだ。
それなのに。
「いいわ。今年は全部食べちゃいましょ」
姉さんはあっさりと妹の意見を通し、《ぷにゃぷにゃ》を全て収穫してしまった。そうして今年の《ぷにぷに》の半分は炒めものに、半分はジャムになって、僕らの腹に収まってしまったのである。
「姉さんは、ドレスが作れなくてよかったの?」
尋ねると、姉さんは笑った。
「去年は豊作だったでしょう?だから少し、残してあるの」
そしてこっそりと、今年つくる予定のドレスの図案を見せてくれた。
繊細で、可愛らしいドレス。《ふにふに》と《ふりふり》で作ったら、きっと柔らかで軽やかな素敵なドレスになるだろう。
でも。
「姉さんには、幼すぎない?」
「だってこれは、あなたが着るのよ?」
「えっ」
固まった僕に、姉さんは笑った。
「ずっと、着たいと思って見ていたでしょう。だから今年は、あなたが着るの」
「出来ないよ。人に見られたら、どうするの」
「お祭りの晩は暗いもの。誰にもあなたって、分かりゃしないわ」
恥ずかしい。ずっと秘密にしていたのに、知られていたなんて。
「可愛いあなたのために、わざと一年寝かせたの。そのほうがぐっと、良くなるんだもの」
姉さんは僕の額にキスをして、頭を撫でた。
「絶対、綺麗してあげる。素敵な一夜にしましょうね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます