第63話 暴食凶獣の侵攻を阻止せよ!

 ユリカ:ミリアさんのもとに入ったクイラント出現の報告・・・てか、早くない?


 境界時間12:00 作戦宙域 アクガリタル国首相専用艦内


 恵:何でこんなに早いのにゃ?予定じゃ、あと46時間はあった筈じゃにゃいのか?


 シン:あれはあくまで予測であって、正確な到達時間ではありません。多少の誤差はありますよ。


 恵:多少の誤差の範疇はんちゅうを軽く超えてるのにゃ。


 クイラント:うおーーーっ!腹減ったぞーーーっ‼︎


 恵:な、なんちゅうバカでかい声にゃ!


 シン:それは、まぁ、人界宇宙の銀河系と同等のサイズですから声もそれなりに大きいでしょう。


 小雪:ローザ、今回はよく我慢したべ。おめさはやっぱ見どころあんべ♪


 ローザ:師匠♡


 ミリア:それで、この作戦に協力してくれる巨獣は?


 モニターに映るゲルマルク


 ゲルマルク:対クイラントに送る巨獣は・・・コイツだ。


 首相専用艦の前に現れるテイオウホエール


 小雪:あっ!クジラさんだべ♪


 ミリア:テイオウホエール⁉︎


 ゲルマルク:かつてテイオウホエールの祖先は天魔大戦時に幾度となくクイラントに立ち向かい、その都度撃退している戦歴がある。つまり、クイラントにとっては唯一の宿敵なのだ。


 ミリア:よしっ!行こうか小雪ちゃん・・・あれ?小雪ちゃんは?


 テイオウホエールの方を指差す恵


 恵:あのちびっ子ならあそこにゃ。


 ミリア:えっ!いつの間に⁉︎


 クイラント:貴様は・・・テイオウホエール!またしても我輩の邪魔をするか‼︎


 ホエール:貴方にこれ以上先へは行かせません!


 クイラント:ん?その声、貴様ひょっとしなくても雌か?


 ホエール:ええ、そうです。


 クイラント:コイツは笑える♪雌の力は雄の半分以下、ならば我輩の敵ではな・・・ん?


 匂いを嗅ぐクイラント


 クイラント:何だ?何やら物凄く食欲を唆られる匂いがするぞ?


 小雪:おめさに食いもんを持って来たべ♪


 コズミックマッシュの炭火焼を出す小雪


 クイラント:そ、それは!コズミックマッシュではないか‼︎しかしあの時の忌々しい臭いが全くしないのはどういう事だ?


 小雪:コレを使ったんだべ♪


 クイラント:その匂いは・・・枯渇醤油か!成る程な、コズミックマッシュ特有の臭みを枯渇醤油で消したか。醤油は大豆、小麦、塩で作られていて、中でも小麦のでんぷんが甘みや香りの元となるブドウ糖に分解するのだが、いかんせん普通の醤油では駄目なのだ。


 小雪:コズミックマッシュは水分含むとダメなんだべな。


 クイラント:その通り、コズミックマッシュの菌はでんぶんを駄目にしてしまう特性も持っている。だが、枯渇醤油には大豆、小麦、塩に加え荒廃味噌こうはいみそを使っている。荒廃味噌にはでんぶんをコズミックマッシュの菌から守る抗体でコーティングされるからキノコの中の菌の網を掻い潜り臭みをとってくれるのだ♪


 小雪:食うべか?


 クイラント:おおっ!頂こう♪


 恵:凶獣と普通に会話してるにゃ、あのちびっ子。てか、めちゃくちゃ詳しいにゃ。


 コズミックマッシュの炭火焼をクイラントの口内へ放り込む小雪


 クイラント:・・・・


 小雪:どうだべか?


 クイラント:う、美味い!肉厚のコズミックマッシュに枯渇醤油で焼かれた芳ばしい深みのある旨み、これはたまらん♪


 小雪:あと食後のデザートにこれやるべ♪


 団子を放り込む小雪


 クイラント:むむ?これはこれは、なんとも程よい甘さがまた・・・むおっ!


 クイラントの身体全体が輝きだす


 クイラント:ふぐぉーーーーーっ!あ、熱い!身体が熱い‼︎


 恵:あのちびっ子、最後に何食わしたにゃ?


 ミリア:さあ?


 小雪:ばっちゃのお友達のお手製、吉備団子きびだんごだべ!これ食えばおめさの身体の悪いモン全部消してくれるべ♪


 恵:吉備団子って、あの人界の桃太郎がお供を仲間にする時使ったっていう?


 シン:それは天界宇宙中央政府薬学庁幹部が不正を隠すために捏造して人間に伝えたもの、その実はカオスに冒された鬼族を浄化するために人界の薬剤師と妖凱製薬の共同開発した対カオスワクチン入りの団子なのです。


 ゲルマルク:まさかあの超巨大凶獣のサイズでも効果があるとは調べるまで半信半疑であったが、あの通り効果抜群なのだ。


 シン:浄化に成功した様ですね。


 クイラント:むふぅ〜っ!何やら我輩、スッキリした気分である♪


 クイラントの前に空間転移するミリア


 ミリア:ねえ、貴方この先何処か行くアテはあるの?


 クイラント:いや、無いが?


 ミリア:私、もう直ぐ巨獣と契約出来そうなの。その時は私と契約してロストレシピの料理を試食して感想を聞かせてほしいの!


 ミリアをジッと見つめるクイラント


 クイラント:ほぉ、随分と修練を積んだ料理人と見た。コズミックマッシュに枯渇醤油を加える案はどっちが考えたのだ?


 小雪を抱き抱えるミリア


 ミリア:この子よ♪


 クイラント:ほぉ、我輩と契約したいがために嘘偽りを言うかと思えばなかなか正直者よな。


 ミリア:私は料理人としてはまだまだ半人前だから。もっと腕を上げていきたいの♪


 クイラント:その謙虚さに加えて向上心の高さ、気に入った!時が来たら契約をしようではないか♪


 ミリア:ありがとう♪


 




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