第15話蛍火シラス

 アオイ:魔界宇宙には人界にない様々な珍しい食材が溢れています。中にはとても数の少ない希少なものもあります。今回登場するのもその1つです。


 魔界時間10:00 晴風峡谷はるかぜきょうこく 静琉河せいりゅうかわ


陽乃邦村ひのくにむら


 アオイ:ここはアクガリタル国首都レストランテから南東部に位置する晴風峡谷にある小さな村。ここはこの国で唯一蛍火シラスの漁が許可された地なのです。


 惠:お日様が気持ち良すぎて眠くなるのにゃ〜♡


 シン:のどかで良い所ですね♪


 真琴:ミリアお姉ちゃん、ここには何の用があるの?


 ミリア:フッフ〜ン♪それはね〜、この時期にこの村の近くの河でしか獲れないとっても美味しい魚があるんだよ〜。


 ダリア:この時期だけなのか?


 村長:ようこそおいでくださいました♪


 惠:魚かにゃ⁉︎それは今から食べられるのかにゃ!


 シン:落ち着いてください。


 ミリア:う〜ん、今じゃあないんだよ。ね、村長さん。


 村長:はい、その魚は『夜にしか』現れず『夜の間のみ』でしか食べられない魚なのです。


 ダリア:その魚とは?


 ミリア:『蛍火シラス』だよ♪


 楓:蛍火シラス?


 ミリア:蛍火シラスは毎年2月下旬から4月上旬の間の、しかも夜の間でしか獲れない上に夜の間に食べる必要のある魚なんだよ。


 楓:随分限定的だな。


 ミリア:うん。夜の間でしか獲れない理由はね、蛍火の名前の通り蛍の光の様に身体が光るんだけど、それが一番美味しくなる秘密なんだ。それに水揚げして僅か一晩で味が急激に落ちるから市場に出回らないんだよ。美食家の間で『幻のシラス』と言われててあのミシュトラン大公様でさえ毎年足を運んでくるくらいなんだから。


 シン:魔界宇宙貴族4大公の一角、魔獣貴族筆頭でユグドラシル族のデイビッド・Y・ミシュトラン大公猊下ですね。


 ミリア:そう、魔界宇宙美食界の2大巨頭の1人ね。


 惠:あの巨体でここに来るのかにゃ。


 シン:大公猊下ほどにもなれば身体の大きさを変えるなど造作もありませんよ


 ミリア:さ、夜まで自由行動だよ〜♪


 そしてその夜・・・


 惠:お〜!


 ダリア:これは見事だ♪


 楓:河が輝いている。魔界でこんな美しい光景を目の当たりにするとは♪


 真琴:綺麗〜♪


 シン:私も長年生きて色んな美しい光景を見てきましたが、これは本当に凄いです!


 惠:これで『長生きはするもんだねぇ』なんて言ったら完全にババァ発言だ・・・


 静かにチョークスリーパーをキメるシン


 巨木の老人:ホッホッホ、いつもながら良い光景じゃのぉ♪


 シン:お久しぶりですね、ミシュトラン大公。


 ミシュトラン大公:こ、これはシンシ・・・おっと失礼。シン殿。


 惠:今ポロッとこのババァの本名言いかけたにゃ。


 ミシュトラン大公:今年の蛍火シラスの光具合は格段に良いのぉ♪この光が蛍火シラスの味をより良く引き立てるのじゃ。


 ダリア:ミシュトラン公、何故蛍火シラスは光るほど美味しくなるのですか?


 ミシュトラン大公:蛍火シラスはの、餌に含まれた不純物を浄化させる小さな器官が胃の部分にあって、その浄化作用の時に発せられる光がそうなのじゃ。餌となる清水藻きよみずもは蛍火シラスの旨味を高める効果がある反面、不純物に含まれてる成分が物凄く苦いのじゃ。


 ダリア:だから光ればその分苦味成分を消して旨味が増すという事ですか?


 ミシュトラン大公:左様。


 漁師:皆さん、蛍火シラスが獲れましたよ!例年以上の上物です♪


 ミリア:では今年は私が調理しますね♪


 ミシュトラン大公:ほほぅ。100年振りにミリア・アクガリタルの料理が食えるのか!これは楽しみじゃのぉ♪


 20分後・・・


 ミリア:お待たせ〜♪


 ミシュトラン大公:どれどれ・・・・・ほぉ!ここまで蛍火シラスの味を引き出せるとは!それにえているのは『羽衣酢はごろもす』じゃな。繊細な蛍火シラスにピッタリの調味料じゃ♪


 ミリア:有難うございます!さ、皆んなも食べよ♪


 全員:いっただきま〜す!









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