第11話大海原の戦士

 アオイ:魔界の漁法は様々、エンジン音のみならず紙の音1つたてる事すら許されない繊細な小さな魚から戦艦を用いて大規模な艦隊戦を繰り広げないと獲れない巨大魚まで。今回は巨獣の眷属並みの大きさを誇る大鮪を追い求める1人の漁師のお話です。


 月影市場つきかげしじょう大競り半年前 魔界時間17:00 アクガリタル国南部漁業都市シーフーズ


海原うなばら家』


 シズカ:はい、お茶。


 アオイ:この方はマーメイド族の海女さんでシズカさん。このお話の主人公の奥様です。


 シンヤ:ありがとう♪


 アオイ:こちらが今回の主人公、魚人族の漁師シンヤ・海原さんです。


 ニュースキャスター:こんばんは、19時になりました。ここでニュースをお伝えします。昨日20時頃、3国国境海域『エンペラートライアングル』にて『大成鮪たいせいまぐろ』の群れが確認され、その一部がカイザークラーケンの生息域を越えここアクガリタル国に向かっている事が判明しました。


 シンヤ&シズカ:⁉︎


 シズカ:シンちゃん!


 シンヤ:ああ!遂に来たか!


 アオイ:大成鮪、それは5000種類にも及ぶ魔界宇宙の鮪の中でも体長5万㎢と群を抜いて大きく、魔界宇宙一養殖困難な希少価値の高い鮪。大抵は魔界宇宙三代珍味の1つでもある巨獣『カイザークラーケン』に捕食されますが、稀に奇跡的にその海域を無事抜ける個体群があり、多くの鮪漁師にとっては生涯の目標となるものです。


 シンヤ:曾祖父ひいじいさんの代から追い求める大成鮪が遂にこの国に!


 ニュースキャスター:専門家の話では、アクガリタル国海域到達は半年後になるという事です。それでは次のニュースです。来年の月影市場での初競りは・・・


 シンヤ:さて、船は『アレ』を使わないとな。


 シズカ:ベヒーモス級戦艦ね。明日朝一でメンテに出さないといけないわね。


 シンヤ:そうだな。さ、お互い明日も早い。寝るとするか♪


 シズカ:そうね。


 アオイ:漁師さんは大型魚漁獲証明書があれば戦艦の所有が認められており、交戦目的での所有は禁止されております。そこは猟銃を持つ猟師さんと同じですね。


 漁当日 魔界時間3:00 ベヒーモス級漁獲戦艦『海王丸』ブリッジ


 シンヤ:エンジン、ソナー、火器管制システム、問題なしっと。


 シズカ:こっちも大丈夫、いつでもいけるわ♪


 シンヤ:ヨシッ!出航だ!


 シーフーズ北東海域 大成鮪到達地点


 シズカ:今更だけど、いつもシャークハルト共和国の海域で餌を食べてエンペラートライアングルを避けて去るのに珍しいわね。


 シンヤ:どうも大成鮪の『好物』がこの海域の深海に現れたみたいなんだ。


 シズカ:『空間海老くうかんえび』ね。


 シンヤ:そう、1000年に一度起こる次元空間の『逆流現象』がたまたまこの深海で発生して次元空間を使って回遊する空間海老が出てきたってわけさ♪


 魚群探知機が大きく反応する


 シズカ:魚群探知機に反応あり!大成鮪出現を確認‼︎


 シンヤ:ワームホールアンカー射出!空間海老を深海よりワープさせる!


 シズカ:了解!ワームホールアンカー射出!3秒後に空間海老出現!


 シンヤ:奴の移動速度は物凄く速い。5000万マイルの深海から10秒で海面に浮上してくる!全艦砲撃用意!


 シズカ:目標浮上まで3・2・1・・・


 海面から飛び出す大成鮪


 シンヤ:デ、デカイ!軽く10万㎢はある!


 海面に向けて落下していく大成鮪


 シンヤ:今だ・・・・砲撃開始!


 衝撃弾が全弾命中し気絶する大成鮪


 シズカ:実弾じゃないにしてもあれだけの砲撃を受けて無傷で、しかも気絶程度で済むなんて。


 シンヤ:元々5万㎢を想定したものだからね。10万クラスは全くの想定外だ。多分群れのリーダー格だな。さ、空間網で捕獲だ♪


 月光漁港


 驚き騒つく漁港


 漁師A:なんてこった!大成鮪がこの国に来てるとは聞いてたがこりゃあ、とんでもないデカさだ!


 漁師B:あれ獲ったの2年前に継いだ海原さんトコのせがれだろ?凄いなぁ♪


 漁師C:天国の親父さんもさぞ喜んでるだろうよ♪


 政府関係者:シンヤ・海原さんですね?


 シンヤ:はい。


 政府関係者:アクガリタル総理がお呼びです。ご同行願えますか?


 シンヤ:はあ。


 20分後首相官邸


 ミリア:貴方が大成鮪を捕獲した海原さんですね?私がアクガリタル国内閣総理大臣、ミリア・アクガリタルです。今回魔界宇宙史上最大級の大成鮪を捕獲したとの事で表彰したくお呼びしました♪


 シンヤ:わ、私をですか⁉︎


 ミリア:本来ですと農林水産大臣が表彰するところなのですが、我が国は建国間もない国なので未だ閣僚人事の最中でして。


 シンヤ:そうでしたか。


 惠:(単に忘れてただけにゃ。こいつ、公務の時はホント超絶美女だなコンチクショウ)


 ミリア:コホン、それでは・・・アクガリタル国所属鮪漁師シンヤ・海原殿、貴君は過去最大級の大成鮪を捕獲するという魔界宇宙漁業史上最大の快挙を成し我が国に多大な貢献をした事によりここに表彰するものとします。アクガリタル国内閣総理大臣ミリア・アクガリタル。


 賞状を受け取るシンヤ


 ミリア:ついては更なる活躍に期待して報奨金1億ヘルネス(日本円換算100億円)と漁獲用戦艦3隻の所有を許可します。加えて落札額の利益の30%を進呈します♪


 シンヤ:あ、有難う御座います!









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る