第20話
「つかまって!」
クオリスは、リュッコに乗って自分の前に飛んできたロンの差し出した手を、迷うことなくつかんだ。
リュッコのイアンの背に乗り、神獣の住処を目指した。
しばらくすると、リュッコらしき両前足が翼の狐のような動物が空を飛んでいるのがちらほらと目につくようになった。クオリスが「住処はもう近いのか」と訊くと、二人の前方より肯定の返事が返ってくる。
「お母サマーっ!」イアン目掛け、一頭のリュッコが飛んできた。イアンよりも一回り以上小さく、羽ばたきも拙い。ついでに毛色も薄かった。イアンを「お母サマ」と呼んでいたことから、目の前の幼いリュッコがイアンの子どもであることが知れた。
リュッコを真正面から見ると、その容姿がよくわかった。頭は狐で前肢は翼、後肢は鋭い鉤爪のある鳥の脚、尾も鳥のものだ。狐の頭をした鳥のような、奇妙だが神々しい姿であった。
「そのヒトたちをオルシャン島へ連れて行けばいいの?」
「お連れするのは竜人の
「待て、何故私だけなんだ。ロンは連れて行けんのか」
今にもイワンの背に飛び乗ろうとしていたクオリスは、イアンの言葉に即座に噛みついた。イアンは冷静な声色で言う。
「古来より、竜族の地として他の種族の立ち入れぬ場所なのです。竜族か、竜族と契約を交わした者でなければ」
契約、という言葉を聞き、クオリスは自分の手元のイアンの毛を強く掴んだ。
「私とロンがその契約とやらをすれば、ロンも【秘境】に行けるんだな?その方法……」
「方法はわかりません。島へ行けば、何かわかるかもしれませんが」
方法を教えろ、というクオリスの言葉を先回りし、イアンは静かに釘を刺した。
クオリスはロンに向き直った。互いに真っ直ぐに、曇りのない瞳を突き合わせる。
「必ず、【秘境】の場所と契約する方法を見つけて帰ってくる」
「うん。私、待ってる」
クオリスは今度こそイワンの背に飛び乗った。
行ってまいりますと言って、赤い竜人を乗せた幼い神獣は飛び去った。
イアンに翼の部族の集落まで送ってもらったロンは、クオリスが帰ってくるまでフュレンの家で過ごすことになった。
たった二日、三日だが、翼の民も皆ロンとクオリスに対する警戒を解いてくれたようだった。
フュレンもシーツゥも歓迎してくれた。シーツゥが「まるで子どもができたみたいだな」と言い、フュレンが顔を赤くして黙り込んでしまったことは、ハルエナに話さねばならないと思うロンであった。
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