あの日、君の事を
左隣の席には、誰も居ない。
今でも僕は君の事を思っている。
僕の隣には興梠は居なかった。
彼女は転校していったのだ。
それを聞いた時、僕は悔しい気持ちと悲しい気持ちでいっぱいだった。
今では、学生ではあまりに遠い他県へ行ってしまった彼女に僕は手紙を送り続けている。
僕は今日もこうして、何週目かの日曜日に自分の教室で自分の席に座っている。
不意に--。
ガラリと戸が開いた。
「ホントにいるんですね」
呆れたような声。
バッサリと切られた黒髪は、きちんと整えられており、前髪も丁寧に切り揃えられている。
「……興梠、変わったな」
「約束でしたから」
「君を支えてやれなくて、悪かった」
「手紙」
「え?」
「ちゃんと支えてくれました」
「そうか……」
なんだか、少し照れくさい。
「岡田くんは、嘘をつかないんですよね?」
「ああ、僕は天邪鬼だけど、嘘つきじゃない」
「じゃあ、あの日の返事をします」
それは、とうに過去の話だった。
僕にとって、あの時の想いは風化していないだろうか。
興梠は告げる。
今度は逃げない。
本心を隠さない。
少しの期待を込めて。
僕はその答えを聞いた時、フッと心が軽くなった。
その時、僕はやっと本当の意味で救われた気がした。
多分、もう彼女が隣に座る事はない。
認めよう。
今度は僕が変わらなければ、ならない番なのだと。
だから、この話はもう終わりなのだ。
天邪鬼な僕は、嘘はつかないのだから。
あの日、君の事 剣イウ @knsk0405
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