第6話 お誘い

三姫が自分の部屋に戻ると、部屋に控えていた敬子に昨夜の事を話した。


「踊るのを申し込まれると、あんなにも喜べるものなのね」


「お相手が日本人であれば、よりよかったでしょうね」

晩餐会の話を陽気に話す三姫を喜びつつも、不安を隠せない敬子はつい本音を語るが、その思いは届かなかった。


「そうかな?でも、中々西洋人と友達にはなれないし、あちらの事をよく知る良い機会だと思うの!ほら、日本人は西洋マナーを知らないって言われているのよ。」


敬子は、三姫の言う事に一里あると思いつつも、このまま、何時もの様に興味を持った事を探求されては、結婚の道から遠ざかる三姫を心配する。


「もう、みんなして、結婚、結婚って!そんなに、結婚しなくちゃいけないの?」

とご立腹な三姫に対し、敬子もやや激しく応答した。

「当たり前です!!結婚こそが女の幸せ!私は三姫様に、お幸せになってほしいのです!!そして、ゆくゆくは、三姫様の赤子をお育てしたいのでございます!!」


敬子の迫力に押されかけた三姫だが、今は結婚の事よりも、エドワードに会ってもっとイギリスについて知りたいと考えた三姫は、両親が居る部屋へ出て行った。


数日後・・・椿家    ”  ”は英語で喋っているという意味です。


”また、負けたよ!!”


”たまたま運が良かっただけですよ、エドワード”


椿家では悠仁とエドワードが、チェスをしていた。


五連勝している悠仁は、機嫌よく微笑んでいた。


エドワードが今度は負けないと思いながら、もう一回チェスをやろうとしたところに、執事がプレートを片手に部屋へと入ってきた。


「エドワードさま宛に、お手紙でございます」

エドワードは自分宛の手紙を受け取り、差出人を知ると、目を大きくして驚いた。


”三姫さまからだ”


”・・・なんて書いてあるの?”


”一緒にお茶をしたいのと、私の国についてもっと知りたいそうだ”


”へぇ~、そう。”


悠仁は、淑女なら異性へお茶に誘わないと言って、その場を立ち去った


エドワードは、友が去って行くのを見届けると、客室に戻るとすぐに返事を書いた。


執事を呼び出し手紙に渡すと、何を聞かれてもいいように、トランクからイギリスの歴史本を、取り出し、読みだした。


悠仁は自室に戻ると、おもしろくないと思いながら、ふと机に飾ってある写真立てを手に取り、見つめた。


「イギリスの事なら、私に聞けばいいのに」


そうつぶやいては、写真立てを元の場所に、割れないように丁寧に元の位置に戻した。

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