第3話 晩餐会~2~

「あ~早く帰りたいわ~。そしてまた誤解をされたわ....」


ダンスに誘われる事もなく、だからといって壁の花にもなりたくもない。食べ放題のビュッフェで食に走るのも嫌だと思った三姫は、バルコニーに出てぐったりしていた。


「悠仁さまにうっかり反論すると、私が楽しく話しているように見えて嫉妬されるのよね....。本当はバカにされているだけなのに!」


三姫はちらりと後ろを振り返ると晩餐会の様子を窓越しでみる。 きらびやかに着飾った人々がワインやシャンパンを片手に談笑しているのが視界に映る。


「あ~私と同じ年頃の子はパートナーがいたり、アピールしたりしてるわね」


私も頑張らなきゃ!


三姫は自分を鼓舞し、このままでは婚期を逃す!とわかっていながらもどうしたらいいかわからずにいた。


私からグイグイ行くと避けられてしまうわね。 きょ、今日はお勉強として周りを見てみましょう!


誰にも声をかけられない寂しさを悟られないように持っている扇を口元に広げると、更に室内の方へ目を向けると沢山の女性が兄をかこっているのを目撃する。


「お兄様は相変わらず多くの女性に囲まれているわ.....」


忠司はいつものように女性やその親からアピールをされているが、相手を不快にさせないよう上手に断っていた。


その姿に三姫はつい自分と比べてしまうとぶんぶんと頭を左右に振り、視線を右に向けた。


すると今度は悠仁が多くの女性に囲まれている様子が目に入るとこれには思いっきり目を背ける。


「ダメダメダメ!見ちゃダメ!目に毒!」


悠仁さまには相変わらずバカにされるし!周りは彼の何処がいいのかしら?やっぱりお金と地位?


ぶつぶつと一人で文句を言いながら空を見上げると星が綺麗に輝いていた。


「何で男性がよってこないのかしら??令嬢らしくないからかな~?」


「そうだと思うよ。」


「やはり.....って!!」


声がする方へ振り返るとワイングラスを片手に悠仁が微笑んでいた。女でも憧れるサラサラの黒髪に東洋人にしては長い足と堀が深めの整った顔立ち.....確かに惚れない方がおかしい。それでも三姫は一度もこの男に惚れた事がない。


「悠仁さま!?い、いつからそこに??」


「う~んいつからだろうね~。それより三姫も悩むんだね。悩まないのかと思った。」


「当り前よ!私だって悩むわよ!全く失礼し

ちゃうわ。」


三姫はぷいっと顔をそむけた。


「アハハ、三姫が怒った。」


悠仁は少しワインを飲んではまた思い出したかのように笑った。


「三姫は見ていて飽きないよ。うん!」


「それ褒めているのですか?」


「もちろんだよ!そこら辺にいる令嬢達と違って三姫はおもしろいよ。」


悠仁は少年のように目をキラキラさせながら言ってきた。あ~これを見た令嬢は卒倒するわねと三姫は思った。


「令嬢ぶらないし、言葉遣いも令嬢らしくないし、感情が顔にすぐ出るしね」


「ただの悪口ではなですか!」



はぁ.....見た目はいいかもしれないけど中身は残念な方ね。


「今、何か失礼なことを考えなかった?」


三姫はギクッとし、「まさか~。おほほ。」とごまかし部屋の中へと戻って行く。


「あ~危ない、危ない......っわっきゃっ!」


悠仁から逃げるようにバルコニーから出ていった為、前方に注意が回らず人にぶつかって倒れてしまった。


「あいたたたた」


「ダイジョウブ デスカ?」


「(片言語?)、ごめんなさい」


見上げると片膝をつきながら金髪碧眼の西洋人が申し訳なさそうな顔で三姫を見つめていた。


目が合うと手を差し伸べられて思わずドキっとする。


ドキドキしながら差し出された手を取り、立ち上がると


「ありがとうございます」


と言って立ち去ろうとしたが


「ワタシとダンス イイデスか?」


と踊りを申し込まれた。


三姫は思いっきり、振り返り

「も、もちろんです、あっえっと、イエス!!」


と快く返事をする。


人生で初めて男性に申し込まれた三姫は、勢いよく承諾すると、その西洋人と踊り出した。


優雅な西洋音楽が流れる中、三姫はまた別の意味で注目を集めながら踊っていた。


「レディ、ワタシのナマエはエドワード デス。アナタのオナマエは?」


「えっと、礼子です」


「レイコ?でも、ユージンはサンキと言っていましたよ?」


「あっ三姫はニックネームなの。え~っと、私は三番目に産まれたチャイルドで、女の子だったからが由来なの」


ど、どうしよう!?これなら、女学校でもっとしっかり英語を勉強しておけばよかった~!!


ところどころ、英語を挟みつつ習った通りにホールで踊るその顔は笑顔で溢れていた。


「...........」


どこか冷めた顔で二人を見る悠仁はワインを一気に飲み干すと、


「たかがダンスを一回くらい.....」


自分にしかわからない台詞を吐いては二人が躍り終わるまで、ずっと視線を離せないでいた。

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