第27話; 今日からカナダの高校に行く

9月の最初の月曜日がやってきた。

今日からカナダの高校に行く。

入学する高校は公立校なので制服はない。私服でいいのだ。

私はラルフローレンのピンクのポロシャツにローリングストーンの舌出しロゴがところ狭しとあしらわれたバックパックを肩にかけて、デニムのスキニージーンズに真っ赤はナイキのスニーカーで登校した。

夏休みに帰国した時、日本の美容院で毛先にパーマをかけたので、毛先がふわふわと踊っている。

今日は初日なので、陽子さんが高校の正門で待ってくれている。

受付に並べられた椅子に陽子さんと二人で座って待っていると、レセプニスト(受付)に名前を呼ばれ、連れて行かれた先はカウンセラーのオフィスだった。女性カウンセラーからは、フレイザーハイツ高校の留学生専任のカウンセラーだと紹介を受けた。

「あなたが今学期履修する教科を今から決めましょう」

と言われ、PCの画面を見せられながら、「この教科を履修したらどうかしら?」などと、私の興味がある教科を尋ねてくれる。所々陽子さんが通訳してくれる。

陽子さんの説明では、「私が在籍するオンライン・ハイスクールではどんな教科でも欠点さえ取らなければ認定してもらえるから、好きな教科を選びなさい」と言う。

カウンセラーの説明では、「歌を唄うことが好きならばコーラスと言う教科があるし、ギターを弾くのが好きならばギターと言う教科もあるわよ」

「え?そんな楽しそうな教科でもいいの? 陽子さん」

「どんな教科でもいいのよ。ただし、1学期間で取れる教科は4教科だけだから、4つ選びなさい。美紅は現地高校に1年間の入学登録を行ったので、1年間で4教科×2学期勉強することになるから。今日は最初の1学期に勉強する4教科を決めなさい」

陽子さんとカウンセラーと相談しながら、私が履修した教科は、①コーラス ②調理 ③高校2年生体育 ④ESLの4教科だ。

放課後にKENに何の教科を履修したのか聞いたら、KENは ①高校2年生数学、高校2年生社会 ③高校2年生体育 ④高校1年生英語だと言う。

私は不安になって、陽子さんに電話を入れると、

「KENは卒業留学だから、カナダの文部科学省が定める卒業に必要な必須教科を取らなければいけないけど、美紅は単位置き換え留学だから日本の高校に単位を移行するから、日本の高校にある教科を取れば良いのよ。①コーラスは高校2年生の音楽に置き換えられるし ②調理も高校2年生家庭科に置き換えられる、③体育は、高校2年生体育に置き換えられ、④ESLは高校2年生英語に置き換えられるから、この4教科で18単位認定してもらうために欠点さえ取らない努力をしなさい」

と言われた。

KENはESLでの就学は必要なしと、先日に受けた英語力試験で判断されたらしい。

陽子さん曰く、それは凄いことだと聞かされた。でも体育は私と同じクラスだったので、毎日一時限KENと一緒に過ごすことが出来る。

 カナダの高校は、1日4時限。1学期に履修できる教科数は4教科。つまり月曜から金曜日まで同じ教科を勉強する。例えば、月曜日の時間割が1時限ESL、2時限コーラス、3時限体育、4時限調理、だとしたら、火曜日の時間割りは1時限調理、2時限ESL、3時限コーラス、4時限体育、の様に時間割は変わるけれど学ぶ教科は毎日変わらない。そして自分の教室はなく、履修した教科の先生の教室に生徒たちが移動していくのだ。

いわゆる大学のシステム、いやいやオンライン・ハイスクールのシステムと同じだ。

生徒全員に個人で使用するためのロッカーが与えられる。

授業を受け始めて驚いたことだが、カナダ人の高校生は教科書を家に持って帰らない。自分のクラスが定まっていないから自分の机がない。そのためロッカーが自分の机代わりになっている。みんなクラスで受け取ったプリント(これが教科書の代わりだ)やノート、私物を個人のロッカーに入れている。

体育のユニフォームさえもない。自分でTシャツとスエットパンツ(ジャージのズボン)を持ってきて、更衣室で着替えて、体育の授業を受ける。

校内を歩くと、白人も多くいるがアジア系のカナダ人も多いことに気づく。

不思議なのは、やっぱり白人は白人同志でつるんでいるし、アジア系はアジア系のカナダ人同士がつるんでいる様に見える。

白人の女の子たちは、とても煌びやかで、ビバリーヒルズ高校白書を地で行く高校生活を送っている様に見えた。

私が唯一心を落ちつけることが出来たのはESLのクラスだった。その場にKENはいないけれど、2ケ月前まで通っていた語学学校と同じ雰囲気があり、安心することが出来た。

但し、語学学校と現地高校のESLの最大の違いは、語学学校では色々な国の高校生がいたけれど、現地高校のESLは大半が韓国からの留学生なのには驚いた。その中で私が仲良くなったのは、ベトナムから留学にきているハーさんだ。彼女は私よりも1才年下で、カナダの高校を卒業するために留学している。

ハーさんはとても優しくて良い子なのだけれど、ベトナム訛りの英語は聞きづらかった。

私は校内で唯一の日本人だったので、意外にもカナダ人生徒たちから優しく接してもらうことが出来た。調理の授業では、班に分かれて料理を作るのだけれど、班分けでどこに入れば良いのかおどおどしていたら、フランス系カナダ人のヘイミティが私達のグループに入れば良いよと声をかけてくれた。

何より楽しみだったのはKENと会える体育の授業だった。ジーンズ姿のKENしか見たことがなかったけれど、スエットパンツ姿のKENも新鮮だった。KENは韓国ではバスケットボール部に所属していたと聞いているけれど、バスケがもの凄く上手で、フレイザーハイツ高校でもバスケ部に入部した。

私は何のクラブに入ろうかと悩んでいたが、運動が苦手な私に、カウンセラーが

「ここの高校は日本語クラブがあるので、美紅が入部してくれると、部員が喜ぶと思うわよ」

と勧めてくれたので、私は日本語クラブに入部した。

フレイザーハイツ高校に在学する日本人の留学生は私だけ、私の国籍が日本人だと知った日本語クラブの部員たちは、キャーキャー言い、私は彼女たちに取り囲まれた。

「わたし、きょねんとうきょうにいきました」

「みうらはるまのファンです。みうらはるまは好きですか?」

「日本のアニメは何が好きですか?」

と矢継ぎ早に日本語で話しかけられた。

KENが行くと聞いて、私もKENと同じ高校に行きたいという思いだけで入学した現地校だったけれど、意外にも私にはとても居心地の良い場所となった。

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