第15話; 解き明かされた理由、それはアスペルガー
9月に来加した私だったが、パパがお正月は日本で家族と過ごそうと言うので、カナダでのクリスマスは来年に取っておこうと諦めて、私は12月に日本に一時帰国をした。
そして、パパには内緒でママに
「発達障害の検査を受けたい」
と言うと、ママは驚き
「誰かに美紅ちゃんが発達障害とでも言われたの?」
と目を吊り上げて怒っている。
とても陽子さんに検査を勧められたなんて言い出せない。
それでもめげずに、ママに頼み込んだら、
「美紅ちゃんが障害児のわけがないでしょ。検査することで、美紅ちゃんが納得できるなら行きましょう」
と言ってくれた。
家の近所の心療内科にママと一緒に行き、私は数回のカウンセリングを受けた。
私の想像では血液検査を受けて、結果私は発達障害かそうでないかの検査結果を聞かされると思っていたけれど、そうではなかった。カウンセリングを数回受け、後日に医師からの診断をママと一緒に聞くことになった。
心療内科の先生から
「美紅さんはアスペルガー症候群だと考えられます」
と言われた。
アスペルガー症候群? 聞きなれない名前に、怖さが倍増した。
「アスペルガー症候群とは、発達障害の一つです。対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。明確な原因は現在もわかっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています」
ママが言うには、心療内科の先生の顔が中田カウス・ボタンのカウスにそっくりだと言う。(誰それ?と思ったが、ママが中田カウスさんの親戚に違いないと言う)先生が、私はアスペルガー症候群という発達障害だと診断した。
カウス先生の説明を聞いている時、私の脳裏は小学校、中学校と、周りの女子からいつも「田中さんって変わっているよねー」と言い続けられた映像が走馬灯の様に蘇っては消えまた新しい映像が頭に浮かび、「どうしてなの」と彼女たちに聞きたかったけど決して聞けなかった答えが、今日ここで解き明かされたことに、涙を止めることが出来なかった。
私の泣く姿を見て、やはりママも泣いている。
その日の夜遅くに、トイレに行きたくなり、一階に下りていくと、リビングの電気がついていることに気が付いた。足音を忍ばせて、リビングに近づくとパパとママの話し声が聞こえてくる。ママが今日の診断についてパパに報告しているのだとすぐに理解ができた。
ママは
「美紅が学校に行けなくなったのは、私の育て方に問題があったからだとずっと思ってきましたが、私のせいではなく病気のせいだったのですね。美紅に障害があると告知されたことは凄くショックでしたが、私のせいではなかったことを知り、少し救われました」
と話している。
私は、今までママをそんな風に苦しめてきたことを知らなかったので、ベッドに戻り、自分が障害児と診断されたことよりも、私がママをそんなにも苦しめてきた事実を知り、布団の中で海老の様に丸まって朝まで泣き続けた。
翌日は土曜日だったので、パパが家に居て、パパから美紅に相談したいことがあると言われた。
パパの相談とは何なのだろと思い、リビングのソファに座ると。パパは
「パパとママはこれから美紅の治療に全力を注ごうと思っている。今回の日本滞在は短期間で、直ぐにカナダに帰ることになっているが、美紅をカナダには帰さない」
と言われた。
昨日の診断を受け、一番恐れていた審判が、翌日の朝に下されたのだ。
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