第7話; 通信制高校に行こうと思う
高校には行かないと決めていた私は、周りの不良仲間が高校に行くと言い出しても、万引きやカツアゲに明け暮れていた。無免許で盗んだ原付バイクにまたがり、コンビニ前でリサが店内の商品を山積みにした籠を持って飛び出してくるのを待って、籠を持ったリサを原付の後ろに乗せて爆走する。
「リサ~、最高!」
「世の中、ちょろいもんだよ」
「こんな世界、壊してやろうぜ」
「どうやって?」
「こうやるの、引き金引いてさ。バ~ンバ~ン!」
「キャハハハハ」
私とリサは、そんなことを繰り返す毎日を送っていた。
中学三年生の二学期に入り、受験に向けての保護者面談が始まった。
「私は高校には行かない」
とパパとママに言ったら、いつものことだけどママが泣いて
「美紅ちゃん、高校くらいは行ってちょうだい」
と半狂乱になっているので、中学の担任の先生が勧めてきた通信制高校に行くことにした。
「通信制高校って何?」
先生にそう聞くと、
「通信制高校は、毎日学校に行かなくても良い高校なのですよ。学校に行っても良いし、学校に行けない子は自宅でインターネットを使って授業を受けることが出来る高校です」
と教えてくれた。
通信制高校は、今の日本に溢れる不登校者や高校中退者、またはひきこもりと呼ばれる子供たちであっても、高校卒業資格が取れる救済的存在らしく、まさに私の様な子が行くべき高校なのだ。
そして担任は、通信制高校を卒業するためには、三つの条件を満たせば卒業出来ると教えてくれた。
その三つの条件とは、次の通りだ。
一.三年間の在籍期間
二.74単位修得
三.特別活動30単位時間
担任は、私がどこかの通信制高校にさえ進学してくれたら、自分の責任は果たせると思っているのだろう。
何度も言うが、私は勉強が出来ない訳ではない。ほんの少し勉強したら、それなりの女子高校には合格できるだろう。それでも、この時には私は既に理解していた。
間違いなく高校に行っても、そこに私の居場所はないに違いない。きっと苛められるか無視をされて、また独りぼっちになるだけだ。それならば、家で勉強が出来る選択のある通信制高校に行く方がましだと考え、私は通信制高校に行こうと決めたのだ。
私は通信制高校の入学試験を受けた。
入試問題には、「次の課題、『自分の夢』について作文を書いて下さい」と書かれていた。
私は「なぜ高校を卒業したいのか、なぜ通信制高校を選んだのか、将来は必ず大学にも進学したい」と、自分の夢は一枚の用紙には収まらず、誰かに自分の思いを伝えたくて答案用紙の裏面に渡ってまでも書き続けた。
この時私は初めて気が付いた。私には夢が一杯あったのだ。ただ、今までそれを語れる相手がいなかっただけなのだ。そう、私には夢が沢山あるんだ。
私が選んだ通信制高校は、広域通信制高校だ。
広域通信制高校とは、日本全国どこに居住していても入学できる通信制高校のことをそう呼ぶ。広域以外にどんな通信制高校があるかと言うと、定められた都道府県でのみ認可された狭域通信制高校もある。狭域通信制高校は、認可を受けた都道府県に居住していないと入学することが出来ない。
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