第6話; この場所さえあれば生きられる

私は、決して頭は悪くなかった。小学6年生の時には学校に行っていなかったけれど、家では小学生向けの通信教材ドリルを使って毎日家で勉強は続けていた。

リサはいつも

「美紅、どうして勉強していないのに、テストの点数は良いのよ。あんたって、わけわかんない」

と言っては、不思議がられた。

リサの家にたむろしている仲間は、将来何になりたいなんて、まっとうな会話をすることはないだろうと思っていたけど、意外にも彼らにも夢はあった。

だけど、「将来はてんとう虫になる」と本気で言う子もいた。

アイドル歌手の誰かも「フレッシュレモンになりたいの」とほざいていたりするけれど、リサの家にたむろする彼女たちも運さえ良ければ、アイドル歌手として「てんとう虫になりたいの」と言っていれば、世間は可愛いおばかさんとして受け入れてくれたのかもしれない。

私は将来になりたいものなど、当時は考える力さえも持ち合わせていなかったけど、小学生の時の様にクラス全員に無視され、上履きを隠されたり、机に死ねと書かれたりする、そんな惨めな自分にだけには戻りたくなかった。

不良と呼ばれても良い、男たちにまわされても良い、この場所さえあれば生きていけると思っていた。

中学3年生になる頃には、タバコと合法ハーブ漬けで、やっぱり学校には殆ど行かず、夜にはリサのママの店で年齢をごまかして働いていた。

その頃には交友範囲も広くなり、抱かれる男は不良仲間ではなく、チンピラと呼ばれるやくざになっていた。

パパとママは、どんどん見た目が派手になる私を心配したが、小学生で部屋に引きこもり全く人との関わりを持てなかった当時の私と比べると、今の方が美紅は生きていると思ってくれている様に見えた。

学校では、私が廊下を歩くと、皆が怖がり道を開けてくれた。お金を頂戴と言えば、小銭ではあったけれど、昼食代くらいにはなる小銭は簡単に手に入った。

私の周りにいる不良仲間は、中学三年生の進学を考える時期になると、私でさえ驚いたが、全員が高校に行くと言い出した。

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