第3話; 不登校と呼ばれる少女(2)
不登校となり一年が経ち、卒業式を終えた数日後に、クラス担任が小学校の卒業証書を持って自宅にやってきた。
私は先生と顔を合わせたくなくて自室に引きこもっていたのに、ママが
「折角、先生が来て下さっているのだから顔を出しなさい」
と言って、無理やり私の手を引いてリビングに連れ出し、私はリビングで担任の先生から卒業証書を受け取った。
学校なんか大嫌いだったし、学校に行ってもいないのに、これは何の卒業証書なのだろうと思ったが、それでもママは大切そうに卒業証書を眺めて、手の平で優しく撫で、まるで宝物を箱に入れる様に、それを筒の中にしまった。
担任の先生は、
「中学に進級することは、良いリセットの機会だと思うので、中学からは毎日学校に行きましょうね、田中さん」
と私に言った。
学校が変われば、過去はなかったことに出来るのだろうか?
公立の小学校に行っていた子供達の多くが公立の中学校に進学するのに、中学校に入学したからと言って、私を知っている元クラスメートだってきっと入学してくるにちがいないのに、何がリセットだ。
だからと言って、小学6年生の殆どを行っていない私の欠席日数が記載された成績書では、どこの私立の中学校を受験したとしても合格などするはずもなかったであろう。
私は中学校に進学することに期待などしてはいなかったけど、それでもかすかな期待は胸の奥のどこかに隠れていた様だ。
パパとママも担任の先生と同じことを言う。
「美紅ちゃん、お願いだから、中学からはちゃんと学校に行ってね」
と、毎回この話題になるとママは涙で言葉を詰まらせる。
胸の奥に隠された私の願いは、中学に入ったら奇跡が起きて、新しい私に生まれ変われるかもしれないと、私の心は深く傷ついていたのに、なぜなのだろうか奇跡は起こるかもと、かすかな希望を捨てきれなかった。
私は、その時まだ12才だった。きっと幼かったのだろう。
もう一度信じてみようと、真新しい中学校の制服に身を包み、中学校の入学式に行くことにした。小学6年生で既に私の身長は155センチあったので、制服を着た私を見てママは、
「高校生と言っても間違われないかも」
と、パパもママも美しく育った私を見て誇らしげだった。
この校区では、近郊3校の小学生が、私が行く区立の中学校に入学してくる。
中学に入学し、私は一年二組の生徒となった。
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