番外編六

━━番外編五の続き


たけるは、巻き込まれてすぐに瓦礫で頭を強く打ってしまい、そこから後の記憶が無かった。


━━目が覚めるとそこは...よく分からないところだった。


「あ、目が覚めたかい?」

「あ、はい...あなたは?」

「儂かい?儂は医者だ」

...「「「「「えぇ!!???医者なのぉぉぉぉ!!!」」」」」...

「こら!騒ぐんじゃない!」


そこに居たのは自称医者と、人が沢山いた。

沢山の人が自称医者の医者宣言に一度に驚いていた。

自称医者が叱ると静かになった。逆に耳が痛くなる程静かだ。


(あぁ...地震と津波があったから逃げてきた人達か...ん?あれ!俺、津波に流されたはずだよな...何故こんな所に...)


「あの、俺津波に流されていたはずですけど何故ここに?」

「儂らもよく分からん。波がこの高台に入り込んで、その波が引いて行ったら君がいたからな」

「そうだったんですか...すいません」

「良いんだよ、自然とやらは無限の可能性を持っているからな...」

「そうなんですね」


どうやら、ここに居る人達全員たけるがここに着いた理由を知らないらしい。


(波によってここまで...?)


ここは町の風景を見る為の所のようだ。

地上からだと四階建ての家の屋根から見下ろす程の高さだろうか。

そして、たけるは落下防止の柵を握って、たけるが来た方向を見てそう思った。


それからたけるは高台に避難している人達と談話していた。

内容は...


たけるからは━ここはどこか、この災害による被害

返答はこうだ“ここは、茅ヶ崎北部。そう、たけるときよみが行っていた相模湾の沿岸の町だ。この災害による被害はよく分からない”ということらしい。


避難している人からは━どこの人なのか、なぜ津波から出てきたのか、家族はどこなのか、ここあたりに知り合いはいるか

返答は“埼玉から来た、何故津波から出て来たのかは自分でも分からない、家族は居ないが彼女は居る。知り合いはよく知らない”


など、話していた。

その翌日、ある人からこう言われた


「たけるくん、きよみさんが居たらしいわよ」


本当ですか!?という言葉が無意識に出たのは言うまでもない。


「でもね、ここからだと、結構遠いのよね。それに...」


話によると、彼女は東京の清瀬市に避難しているそうだ。

ここから歩いていっても半日近く、いや、半日以上掛かるかもしれないそうだ。

それに、津波がまだあるから危ない。津波が引くまで待とう。という話で纏まった。


━━そして、一週間後。津波が完全に引いた。

たけるはその日の朝、その高台から出発する事になった。


「今までお世話になりました」


たけるはそう言って頭を下げて、出発した。

一緒に行くのは高台で俺の事を見つけてくれた女性(かれんさん)だった。

とても長い道のりだった。

途中、開いている食堂があった為、そこで食事を取ったり、コンビニなどでお弁当を買って食べたりした。

お金は、俺のお金でと思っていたが、津波に流されてしまっていた為、かれんさんが代わりに払ってくれた。

そして、夜闇が深くなり始めた頃、きよみが避難している避難所に到着した。


「たけるさん!大丈夫でしたか!?」

「あ、あぁ...心配かけてすまなかった」

「たけるさんが無事でよかった...」


きよみがたけるに近づき、安堵した表情でたけるを見ていた。


「あなたがきよみさん?」

「は、はい!あの、たけるさんをここまで連れてきて下さりありがとうございます!」

「いいのよ。実はね...」


そして、きよみとかれんさんは、俺に聞かれないように離れて話し始めた。

聞き耳を立てるのは行けないと思い、俺は外の景色を見に行った。

ここ、清瀬市は特に被害はなかったようで、通常の生活を送っている人がほとんどだった。

この避難所には津波の被害にあった人達をヘリコプターなどで連れてきたらしい。

そして、たけるが戻ったら、ちょうど話し終わったようで、きよみとかれんさんが戻ってきた。


「たけるさん、帰りましょ。もう、ここにいる必要は無いでしょ?」

「あぁ、そうだな。...どうもありがとうございました。このご恩は一生忘れません。」

「えぇ。気を付けて帰るのよ」

「はい。ありがとうございました」


きよみとたけるが一緒に頭を深々と下げた。

そして、二人は埼玉へと帰った。


━「「大変だったね...」」━


二人はそう呟いて自宅へと帰った。

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