番外編五

━━━きよみと海へ行く日の朝、現世と天国との境目にて...


(お父さん、お母さん。今日、きよみさんと海へ行くよ。何事も無いように見守っててね)


たけるが自宅の仏間で手を合わせてそう心の中で話した後、荷物を持って家を出た。


(安心して、私たちがあなたに降り掛かる不幸をすべて受け止めてみせるから!)


たけるの背中を見ながらたけるの母は力強く返した。まるで何かを悟っているかの様に。

そして、たけるはきよみの家に向かい、きよみと合流した。


「さあ、たけるさん。今日から出掛けますよ!」

「そうだな、荷物の準備は出来てるよ」

「じゃあ行きましょう!」


そして、たける達は神奈川にある相模湾へと向かった。


「着きました!相模湾!」

「そうだな、相模湾。結構広いな」

「そうですね。着替える場所は...あ、あった!」

「じゃあ、着替えに行こうか」

「はい!」


そして二人は更衣室へと向かい、水着へと着替えた。

たけるときよみは二人で水泳競走をした。

たけるもきよみも泳ぐのが得意なようで、勝敗がつかないという事態になった。

そのうち、二人は飽きてきたようで海から上がってきた


「はー、たけるさん速いですね」

「きよみこそ」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、これからどうする?」

「じゃあカフ」


━━ズドドドドォォォォォンンン!!!


そんな音とともに二人に大きな揺れが襲った。

二人とも思考が停止しているのか、唖然としていた。

たけるがはっとなり、こう言った


「地震だ!」


と。

その言葉できよみもはっとなったようだった。


「や、やばいじゃないですか!に、逃げないと...」

「そうだな!早く逃げ...は!?あ、あれは...」


きよみがオドオドしていると、たけるが避難誘導をしようとしていると、たけるが海を指差した。

きよみがそれを見るとそこには...


「「つ、津波!?」」


二人、声を揃えてそう叫んだ。

津波は無情ながら二人へと徐々に近付いて行っていた。


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」


二人は走って津波から逃れようと走り始めた。

しかし、津波が速いようだった。二人は津波に巻き込まれてしまった。

たけるは、巻き込まれてすぐに瓦礫で頭を強く打ってしまい、そこから後の記憶が無かった。


━━(さて、ここから打ち上げ作戦の開始よ!)


たけるの母はそう言ってたけるの周りにある波を動かした。

それに対応してたけるはどんどん先へと流されて行った。


(とりあえず、この町の一番奥の高台に打ち上げるつもりだけど、高さを...よし、こんな感じの高さで波ごと放り込めば自然かな?)


たけるの母はそう言って、また波を動かしていた。

たけるの周りの波が盛り上がり、町最奥部にある高台の方向へと一気に流れて行った。

そして、大きく波しぶきが上がり、たけるの母はたけるを町最奥部の高台へ無事に連れていくことが出来た。


そう、たけるは運良く津波により高台へと『流された』のではなく、たけるの母の手によって高台へと『連れていかれた』のだった...


━━━現実ではありえない事が起こることがある。人はそれを『奇跡』と呼ぶ。しかし、それは誰かによって引き起こされたとすれば?

そう、その誰かに感謝するだろう。

しかし、これに関してはたけるの母がたけるに直接言わないと分からない。

そう、縁の下の力持ちのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る