番外編四~ゆな視点~

(いまゆうたくん、どこにいるのかな...元気にしてるかな...会えるなら、会いたいなぁ...)


ゆなは自室の窓から外を見ながらそう思った。

ゆなには『ゆうた』と言う幼馴染がいた。

彼はゆなと同い年で、小二の時に親の都合により、引越しをしてしまった。

ゆなは彼の事を好意的に想っていた。

しかし、その気持ちを伝えることが出来ぬまま別れをしてしまった。

当然の如く、ゆなは後悔をした。

今、また彼に会えるとなったら、きっとゆなは告白を敢行するだろう。


(ゆうたくん、あの頃から背が大きくなって、カッコよくなってるかなぁ...)


ゆなは、幼い頃の『ゆうた』を思い浮かべ、その姿を変形させていき、180センチくらいの背の高さで、顔が綺麗に整っている姿へと変えて行った。


ピンポーン...


インターホンが鳴った。

いつも母親が出ているため、ゆなは全く気にせずに思案を続けた。


コンコン...


しばらく経ってから、ゆなの部屋の扉がノックされた。


「はーい。どうしたの?」


ゆなはそう言いながら扉を開いた。


「あ、ゆな。ゆうたくんが来てるわよ」

「え!?ほんと?」

「えぇ...おそらくね」


ゆなの母がそこに居た。

母の言葉にゆなは驚いた。そして、嬉しさが溢れてきていた。

しかし、母の表情は終始曇っていた。


ゆなはそのまま玄関へと向かった。


「あ!ゆなちゃん!久しぶり!」

「あ...うん。そうだね」


そこには、ゆなのイメージを裏切るような『ゆうた』の姿があった。

ゆなは衝撃を隠せなかった。


(イメージと違う...)


やはり現実はそう甘くはないようだ。

背は低いし、幼い頃とあまり雰囲気が似てない。

こんなことを言ってしまうと、怒るだろうが


『カワイイ』(幼い姿に)


とゆなは思ってしまった。


「元気だった?」

「うん、元気だったよ」

「そっか...」

「そういうゆうたくんは?」

「俺は元気...と言えば元気かな...」


そう言って、ゆうたは俯いてしまった。


「そう...なんだ?」

「うん...」


ゆなの返答にゆうたは力なく答えた。



━━━それからゆな達は様々なことを話した。


ゆうたが引っ越したあとの話やゆなやゆうたのそれからの話など、時系列順に話して行った。


それらを簡単にまとめると


・ゆうたは引っ越した先の学校でイジメにあっていたこと、そしてそれから引きこもり気味になっていたこと。

・ゆなは順風満帆に学校を過ごしていたこと。

・ゆうたは中学の頃、ある人のおかげで引きこもりから脱出したこと...そのある人とは...


「まさか...」

「そう、ゆなちゃん。君のおかげだよ」


そう、ゆうたはゆなのおかげで引きこもりから脱出できたのだ。



━━━ゆなは中学の頃、一回だけゆうたに電話をかけたことがあった。

その時にゆうたから『イジメがあって、それが原因で引きこもっている』と相談されたのだ。

そこで、ゆなはゆうたから色々と状況の話を聞いてから、解決法を打ち出したのだった。

その解決法のおかげでゆうたはイジメから解放され、且つ引きこもりを脱出したのだった。


ゆなはそのことをすっかり忘れていた。

しかし、その話を聞きながら少しずつ思い出したのだった。

そこでゆなは、ある気持ちが急激にこみ上がってきた。


「あのね、ゆうたくん、ひとつだけ質問するね」

「うん、どうしたの?」

「いまゆうたくんって、好きな人、または付き合ってる人いる?」

「...いや、いないよ」

「そう...あのね...ゆ...」


ゆながそう言いかけた時


「ゆなの事がずっと好きだった...だから今日、ゆなに会いに来たんだよ」


とゆなを抱きしめながらゆうたが言った。


そう、ゆなとゆうたは両思いだったのだ。

ゆうたは、ゆなが告白しようとしているのが分かったようで、ゆなの言葉を遮って告白をしたのだ。


「え...?」


ゆなは不意を突かれたように驚いた。

そして、気を取り直してゆなはゆうたのことを抱き返してこう言った。


「うん...ありがとう...私も好きだよ...」


ゆなは涙を流していた。

そう、嬉し涙だ。


「今は少し離れているけど、きっとゆなの事を迎えに来るから...待ってて」

「...うん!」


ゆなは涙を拭き、答えた。




━━━それからゆなたちはしばらく抱き合っていた...





━━━その頃、ゆなの母親は...



「あらあら...仲がいいこと...ふふっ」


と微笑みながらゆな達のことを見ていたのだった...

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