帽子

耳が痛くなってきた

手がかじかんできた

冬は長い

かぶるものが嫌いだ

でもある日

赤い耳が癪に障ったのか

帽子をくれた

お古なのか、新品なのか

分からないけれど既製品だ

どこにでもある帽子

耳まで覆える帽子

耳当てでないのは

イヤフォンで音楽を聴くのに差し当たりないよう

配慮してくれたのだろう

ファッションに縛りができてしまうなあ、と

思いながらも受け取った

それは嬉しさの方が勝ったからだ

ありがとう、――さん

――さんは小さく笑ってくれた

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