第51話 Capital Punishment
52件の殺人で死刑を宣告された
あの日から1年余りが過ぎようとしていたが
私はまだ生きていた
刑は執行されていなかった
ただ 何度上告しても 上告しても
判決が覆ることはなかった
何度訴えても 訴えても
私の話が聞かれることはなかった
私が受けるべきなのは
刑罰ではなく 治療の筈なのだが
彼等はそのようなものは無駄と嘲笑い
私にはこのまま死んでもらいたいのだと知る
あの大きな暴力の如き拍手喝采が
残酷なまでにそれを証明していた
家族も含め 皆が私を罵り 石をぶつけながら
家族も含め 皆が私の死を喜びながら
誰一人として悲しまれることのないまま
私は死ななければならない
殆ど音の死んだ独房の中で
じっと耳を傾け続ける
カッ カッ カッ 遠くから誰かの足音が聞こえる度
私の死刑が執行されるのではと不安を抱き
執行されなかったと胸を撫で下ろしていた
その繰り返し 繰り返しの日々が
徐々に私の心を蝕み 壊していった
嗚呼 死にたくない 死にたくない 死にたくない 死にたくない
殺したい 殺したい 殺したい 殺したい
死にたくない 死にたくない 死にたくない 死にたくない
殺したい 殺したい 殺したい 殺したい
死にたくなくて まだ殺したくて
独房から逃げようとしたができず
死にたくなくて まだ殺したくて
仮病を装ったが見破られ
死にたくなくて まだ殺したくて
上告しても無視された
もう抵抗する術はない
逃れる術もない
心壊されながら 心潰されながら
心砕かれながら 心殺されながら
私は緩やかに死へ向かわされているのを感じていた
いつぞやのアレクサンドル・クラフチェンコや
他の冤罪連中もこのような気持ちだったのだろうか?
頭の片隅で少しそう思いながら 時は過ぎゆき
気付けば判決から1年4ヶ月もの月日が経ち
1994年2月14日となっていた
この今日 エリツィンは私の上告の完全棄却を決め
すぐさま私の死刑は執行されることとなった
結局 何度上告しても 上告しても
判決が覆ることはなかった
何度訴えても 訴えても
私の話が聞かれることはなかった
私は死ぬ 殺される この今日に
私は死ぬ 殺される もう間もなく
私は死ぬ 殺される この後すぐ
嗚呼 死にたくない 死にたくない 死にたくない 死にたくない
殺したい 殺したい 殺したい 殺したい
死にたくない 死にたくない 死にたくない 死にたくない
殺したい 殺したい 殺したい 殺したい
何とか抵抗する術はないか?
逃れる術はないか?
もう抵抗する術はない
逃れる術もない
私の物語のバッドエンドは覆せぬまま
私の死刑は執行される
執行されるのだ
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