第25話 4 Years' Silence

1978年12月22日 レーナを殺めたそれ以降

1983年6月まで 私は誰も殺めずにいた


表層行動上は 平穏なまま

善良な一市民として過ごしていた


私の日常は何も変わらなかった

フェーニャ達家族のとの時間も何一つ

私の日常は何も変わらなかった

生徒や同僚に馬鹿にされる日々も何一つ


まるでレーナと出会う前と同じような時間が

レーナを殺めたその後も続いているようだったが


ことあるごとに私はレーナを思い出す


いつでも彼女の微笑みが心にある

いつでも彼女の匂いが心にある

いつでも彼女の死相が心にある


犯した感覚が 殺めた感覚が 遺棄した感覚が

ふとした折に心の中で蘇ってくるのだ


そんなものが蘇る心は既に善良な一市民ではなく

その変貌が私に妙な選民思想と 自信を与えた


人には言えないが 私はこいつ等とは違う

何処か超越できた 私はこいつ等とは違う

そう思うことで 私はいつも笑っていられた


生徒達に馬鹿にされても

同僚達に馬鹿にされても

誰から馬鹿にされても


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

そんな私はもう存在しない


レーナとはあんなに 激シク突キ合ッタカラ

レーナとはあんなに 激シク愛シ合ッタカラ


教師としてクズ扱いされようとも

私は自信のある私でいられたし

教師としてクズ扱いされようとも

私の4年間は幸福であったのだが


ことあるごとに私はレーナを思い出す


いつでも彼女の微笑みが心にある

いつでも彼女の匂いが心にある

いつでも彼女の死相が心にある


犯した感覚が 殺めた感覚が 遺棄した感覚が

ふとした折に心の中で蘇ってきて


その感覚が 今日の幸福を

物足りないものに思わせてしまう

今も覚えてる 黒い罪の味が

強い飢餓を私にもたらしてしまう


1978年12月22日 レーナを殺めたそれ以降

1983年6月まで 私は誰も殺めずにいたのに

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