第26話 Prelude to SK -Discharged from a teacher-
1982年 私は何度目かの教職解雇となった
理由はいつもと同じ 能力不足
そろそろ潮時だな
此度の解雇で私は 教職の諦め時と感じていた
家に帰ると教師でいる私を誇りに思っている妻子がいる
本当の私はただのクズであるのに彼女等はそれを知らず
知らないからこそ幸福でいられている妻子がいる
その幸福を失わせてはいけない
そう思いはしているけれど
これ以上続けるにはもう無理があるし
これ以上続けて得る希望もないので
私はあっさりと別方面の仕事を探して
私は国営工場の幹部職員となった
やはりフェーニャは少しガッカリな顔をしたが
思っていたよりもすんなりと私の転職に納得してくれた
私が今まであちらこちらに教壇を移していたので
教職にあまり向いてないと薄々感じていたようだ
期待に応えれらなかったのに フェーニャは私を責めない
リュドミラやユーリーも 落胆した顔を見せない
それどころか私を労ってくれるのに
私を責めず 労ってくれるからこそ
私は私の家族との間に距離を感じるようになった
また教職ではなくなった私は
他所の人に馬鹿にされることもなくなった
生徒達に馬鹿にされることはもうない
同僚達に馬鹿にされることももうない
誰に馬鹿にされることももうない
ダメ教師な私はもういない
そんな私はもういないのだが
いないからこそ私の心に隙間が生まれ
その中にレーナの呪いが入り込んでいった
いつでも彼女の微笑みが心にある
いつでも彼女の匂いが心にある
いつでも彼女の死相が心にある
紅い世界がいつでも思い出せる
紅い世界がいつでも手招きしている
氷のように冷たい月光の下で
ナイフの銀と彼女の朱が鮮やかに混ざる
その様は 嗚呼
大きく硬く聳えるイチモツを
膣へと突き立てるセックスではないか
求めても 求めても 決して得られなかった官能が
あの時ようやく私のところに舞い降りてきてくれた
こんな地獄の業火のように激しい悦楽は
未だかつてなく 今もまたない
嗚呼 あの官能をまた味わいたい
空を見上げながら 私はふとそう思うようになっていた
あの官能にまた溺れてしまいたい
通りかかる人を見ながら そう思うようになっていた
フェーニャ相手にあんな官能を求められないから
私の意識は外へ 外へ
私の欲は外へ 外へ
1978年12月22日 レーナを殺めたそれ以降
1983年6月まで 私は誰も殺めずにいた
表層行動上は 平穏なまま
善良な一市民として過ごしていた
脳内は血塗れた官能で紅に染まり始めていたけれど
表層上だけはずっと ずっと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。