第10話 人里
清流はそんな光景を一瞥してから、人間たちがより集まっている場所へ移動した。場所は大体、
長屋が並んだ一帯を過ぎれば、次に見えてきたのは長屋とはまた違った形の建築物。それが何件も連なって並んでいる。中の方に目をやれば、着物が並んでいたり、また違う建築物に顔を向ければ器が置いてあったり。
(これは、朧が言っていた店というやつか……)
そんなことを思いながら歩みを進めていると、一際人間たちが集まっている場所を見つけた。
清流がそちらに向かっていくと、ちょうど三人の若い男が
落ちてしまうのではないかと内心ハラハラしている清流とは反対に、周りにいた人間たちは歓声を上げている。
その後も男は落ちることなく、梯子を支えていた仲間の男と出番を交代していた。
別の方では人形師と思われる男が女の人形を手にして何か
辺りを見回してみると、驚いたことに誰一人として同じ芸事を披露している者はいない。
清流は我に返ると、群衆から離れて再び歩き始めた。
芸事を披露すると言ってもどこで披露すればいいのか。どの程度のものを披露すれば、人間たちが金を出してくれるのか、清流にはまるで分からない。
その時、若い女の声が聞こえてきて、思わず立ち止まった。
十五、六と思われる年齢の娘は両手に扇子を持っている。
「これからお見せしますは、水の芸だよ。兄さん方、姉さん方とくと見ていっておくれ!」
よく通る明るい声で娘がそう言うと、同時に両の手に持っていた扇子を勢いよく開く。
彼女の後ろで控えていた二人の男女はそれぞれ手にしていた笛や太鼓で演奏し始めた。笛と太鼓の音に合わせて、扇子がゆっくりと舞い始めたかと思ったら、勢いよく水が出てきた。
それと同時に観衆から歓声が上がる。
清流もその不思議な光景に思わず驚いて、その娘の披露する見世物に見入っていた。けれど、すぐに我に返ってその場を離れる。
再び歩きながら、さてどうしようかと考えていた時、ちょうど左手側に川原が見えてきた。何の気なしにそちらに向かって歩いて行く。
川原に降り立った時、一つの考えが浮かんだ。
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