第23話 旅の始まり

コンコン。

「アレンハイドー、朝だよー、起きてー!」

・・・あれ、返事がない。

ドンドン。

「アレンハイド、もう朝だよー!」

・・・まぁさすがに寝てるのかな。

でもドアが開いてる。

えぇい、こうなったら、入ってしまえ!

あとで言い訳すればいいや。

あれ?アレンハイド、もしかして、準備終わってない?

「アレンハイド、入るよー」

・・・あ、いたいた。大いびきかいてる。

「アレンハイド、おーきーてー!」

「うぅ・・・あと5分」

「そんなのない!早くおーきーてー!」

「うぇ・・・ってマイカ!?いや、おま、ちょ、何入ってきてんだよ!?」

「あ、起きた?おはよう」

「お、おはよう・・・じゃなくて!ここ!俺の部屋!」

「あぁ、だって何度呼んでも起きないし、ドアの鍵開いてたからつい・・・」

「いや、ついじゃねえ!」

「でも、この部屋の感じ見ると準備とかしてないでしょ?」

「だって俺は服と装備とお金さえあればいいし」

「服の替えは?」

「ない」

「え?」

「だから、ない」

「はぁ・・・じゃあ道中で買っていくからカバン用意しておいて!」

「お、おう・・・これでいいか?」

「あーそれでいい。じゃあもうご飯行くよ!」

「おう」

食堂に行くと、もうご飯が用意してあった。

さすがナージャさん、できる人だな。

「やっぱり、今日は早く起きると思ってた!ほら早く食べちゃいなさい、ギルドマスターさんとのお約束があるんでしょ?」

「はい、ありがとうございます・・・でも何故それを?」

「勘よ、カ、ン!ほらほら、早く食べちゃいなさい!あ、そうだ!お昼ご飯も作ってあるからお腹すいたら食べてね!」

「ありがとうございます!・・・あ、これ、ターシャちゃんに」

「まぁ、ありがとうね!・・・じゃあ、気をつけて行くんだよ!」

「はい!絶対、帰ってきます!」

「任せとけ」


「お待ちしていました。時間より少し早いですね。」

ギルドに行くと、ソウさんがギルドの前で待っていた。

「いえいえ、お待たせしました」

「いえ、私も今出てきたところですし。お2人の方が大変でしょう、今日だって早く起きたのではありませんか?」

「いえ、そんなに変わりませんよ、だって普段の30分前ですし、日によってはもっと早く起きなきゃいけなかったりするし」

「俺はマイカに叩きお・・・痛てっ、足踏むなよ!」

余計なことは言わんでもよろしい!

あと一応誤解無きように言っておくが私は別に叩き起してなんかないからな。

大声で叫びはしたけど、決して叩いてなんかない。

「ふふっ」

前を見るとソウさんが笑っていた。

ほら、アレンハイドが余計なこと言うから。

「いや、失礼しました。お2人は本当に仲よしなのですね。いい兄妹ではないですか、羨ましいです。」

・・・あれ、もしかして。

「あの、ソウさん、もしかして私たちのことをずっと兄妹だと思ってたんですか?」

「え、だって兄妹じゃないんですか?」

ソウさんが目を見開いている。

「だって、兄妹にしてはあまりにも似てないじゃないですか!」

「俺は別に兄妹でも痛てっ!」

・・・アレンハイド、次に余計なこと言ったら本当に許さないからね?

「まぁ、確かに顔は似てませんが、世の中に顔の似ていない兄弟姉妹なんてざらにいますよ?それにお2人の年齢差も兄妹として十分ありえますし、仲のよさも兄妹に見えますよ?」

「だとしても髪の毛の色がこんなに違う兄妹なんています?」

「・・・あまり見たことありませんがいますね。」

「だか痛てっ!まだ何も言ってないから!」

言いそうだったから踏んだ。

「あははっ!やっぱりお2人は兄妹にしか見えませんよ!・・・おっと、話が脱線しましたね。では、最終確認をします。」

あ、急に真面目な感じになった。

「まず、依頼についてです。王国の先遣隊の方々は、大変使えない・・・オホン、仰々しい鎧をお召しでいらっしゃいますので、すぐにわかると思います。あの方々は怒ると面倒なので、面倒なことになりたくなければなるべくぞんざいな扱いはしないように。」

面倒なこと、か。

それは嫌だな。

「もししたらどうなるんだ?」

「そうしたら『俺達の後ろ盾は国王なんだぞ!』って言われます。」

「うわぁー・・・」

「しかし、国王に言われても何も起きないので大丈夫です」

「え、そうなんですか?」

「はい。実は、前にもこういうことがありまして、その時は僕も向かったのですが、その時に少し対応を間違えてしまいまして。」

「もしかしてその時?」

「はい。その時にも『俺らの後ろ盾は国王だぞ?俺らに歯向かったら国王に言うぞ?』と言われまして。それで、我々も王宮に引きずられたんですよ。」

「でもそれぐらいよくないか?」

「ええ、国王も同じお考えだったようで、話を聞いた国王は『そんなのお主らがただ弱かっただけであろう、お主らを助けたのは彼らじゃ、少しの間違いさえ許してやることができぬお主らは愚かなものじゃのう』と相手にもされませんでしたよ。」

「国王、いい人ですね・・・」

「はい、あの時は私も思わず笑いそうになってしまい、慌ててこらえたのですが、国王も『そんなに面白かったのか?・・・まぁ、確か面白いかもしれんのぅ、ふぉっふぉっふぉっ』とこのようにご寛大な様子で・・・」

「よかった・・・」

あー、この国の王様がまともな人で安心した。

こんないい街のあるところに悪い王様がいるわけないか。


その後もいくつかの確認を終わらせ、

「・・・それでは、こちらからは以上になります。では、何か心配なことはありますか?」

「俺は無い」

「私も・・・あ、そうだ。あの、3日目と4日目だけはターシャちゃんのところにギルドから誰か派遣して欲しいんですけど大丈夫ですか?」

「はい、もちろんです。それでは・・・そうですね、ウォルフあたりを手配しておきます」

「ありがとうございます‪!もう大丈夫です!」

「わかりました。それでは行きましょうか。こちらに馬車があるので、途中まではこれで行きましょう。」

「はい。・・・え?」

「どうしたマイカ?」

「あの、今『途中まではこれで行きましょう』って・・・『行ってください』の間違いでは?」

「は?何を言ってるんだ?」

「・・・あれ、その様子だとまだ話していなかったようですね。途中の都市に用事があるので一緒に行きます」

それは初めて聞いた。

「それ先に言っておいてくださいよ・・・」

「おいおい、マジかよ・・・」

「ははっ、驚かせてしまいすいません。それでは行きましょうか。」

こうして私たちの珍道中は幕を上げた。

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