第19話 討伐とその後
「怪我人です!」
・・・もう来たのか、早いな。しかも結構重傷じゃないか?
「ヒール!」
治すのも早いな。
「怪我人です!」
「怪我人です!」
「怪我人です!毒を負っています!」
「怪我人です!かなりの重傷です!」
「毒を負っている人はこっちに!そうじゃない人はあっちに!」
「ヒール!」
「ヒール!」
「ヒール!」
「解毒!」
続々と怪我人が運ばれてくる。
・・・うんうん、みんなちゃんとやっているな。
さて、魔物たちも近づいてきたみたいだし、サラッとやっつけちゃいますか!
・・・あれ、結構早いな。あ、向こうにはブラック・ベアがいるのか。
「隊長、向こうに魔物の大群がいます!」
お、肉眼でも見えるぐらいまで近づいてきたな。ならなるべく早く殲滅しないと。
「大丈夫、知ってる。」
私は深呼吸した。
「よし、行こう。ファイヤーボール!」
あれ、今回のファイヤーボールボールはバスケットボールとおなじぐらいにしようとしたのに、また大きくしすぎちゃった。
ドーン!
ファイヤーボールが大群に当たると、大軍を跡形もなく消し飛ばした。
わお。自分で撃っておきながら結構強いなぁ。
「すげぇ・・・あんな大群を1発で・・・」
「隊長強え・・・」
「あれには当たりたくない・・・」
「よし、皆さん、魔物の大軍はもういません。治療に集中してください。」
「アイアイサー!」
・・・心なしか少し士気が上がった気がする。
よかった。
「怪我人だ。」
聞き覚えのある声に振り返る。
「あ、アレンハイド。そっちの調子はどう?」
「怪我人が増えてる。しかも結構重傷。これから大量に運び込まれるから準備しといた方がいいぞ。そっちは?」
「さっき魔物の大軍がいたけどそれぐらいかな。」
「魔物の大軍?そうか。心配はしてないが気をつけろよ。」
「そっちもね。報告ありがと」
「ああ。じゃあ俺は行くよ。」
アレンハイドは去っていった。
更に増えるのか。残り魔力はどのぐらいだろう。
残量
999,999
もう戻っているのか。
なら少しは使っても大丈夫だろう。
・・・解毒作業が手間取っているな。
よし。
「皆さん、これから更に怪我人が増えるそうです。重傷の人が多いのようなので、A班もそちらの治療をお願いします。解毒は私がします。」
「アイアイサー!」
これなら怪我人が増えても大丈夫だろう。
「怪我人です!たくさんいます!」
「毒を負っている者は全員こっちへお願いします!」
「はい!」
・・・すごい量の人だ。
これだと一気に解毒した方が早いか。
「解毒!」
・・・ふぅ。とりあえず全員終わったな。
さすがにこの人数を治療するのは時間がかかりそうだな。まだ怪我人来るし。
「ヒール!」
・・・さすがに疲れたな。魔力も結構使っただろう。
残量
999,392
初めて魔力が満タンじゃないのを見た。
それでも1000は使っていないんだな。
「マジかよ・・・あの人数を一気に!」
「俺、隊長が魔力切れにならないか心配だわー」
「俺たちも負けないようにしないと!」
・・・何か治療のスピード上がったな。
あれ?何か大きい魔物がいるな。
こんなに大きい魔物の反応は初めてだ。
しかも、こちらに向かってきている?
「皆さん、大きい魔物がこちらに向かっています。急いで撤退の準備を・・・いや、それだと間に合わない、そこから動かないでください」
無理だ。この人数、しかも怪我人がいるのに素早くなんて撤退できるわけがない。
・・・戦うしかない。
私なら、絶対防御と絶対攻撃があるから何とかなる。いや、何とかするしかない。
せめてここにいる人たちは守りたい。
きっとウォルフさんはそのために私を隊長にしたんだ。
「え、隊長?何をなさるんですか?」
「いいから。できればあまり音を立てないように。」
「え、隊長、まさか―」
「対魔法結界。対物理攻撃結界。対毒性攻撃結界。」
「た、隊長!それは無謀です!」
・・・私だってそんなことわかっている。しかし、それしかないのだ。
反応が大きすぎてサイズを測りきれないため、このサイズの魔物は私にも倒せるかわからない。
しかし、やるしかない。
ついに、魔物がやってきた。
思っていたより大きいな、12mぐらいあるんじゃないか?
なんかクマに似ているが違う。
私は深呼吸(本日2回目)をすると、魔物と向き合った。
「大きめのファイヤーボール!」
私の手から放たれた火の球は今まで私が放った中で最大級である、直径が私の腕の長さぐらいのものだった。
その球は魔物の顔に当たり、魔物は
「グワァガアッー!」
という声をあげながら反応を消した。
あれ、倒した?
倒したっぽいな。
案外早かった?いや、あのファイヤーボールは過去最大のおおきさだったから相当魔力を使っただろう。
残量
997,561
あれ?そうでもない。
それに、もう半径5kmに魔物はいない。
きっと、ブラック・ベアは2体とも倒されたのだろう。冒険者のみんながこっちに来ている。
よし、もう大丈夫だ。
結界を解くと、みんなが集まってきた。
「隊長、大丈夫ですか!?お怪我は?」
「隊長、魔力切れは起こしていませんか!?」
「隊長、マジパネェっす!」
「隊長、本当に心配しました!」
「隊長、怪我人の治療全員終わりました!」
「ご心配をお掛けしました。私はこの通り、怪我もしていないし少し疲れたけど魔力か切れも起こしていません。怪我人の治療も問題なく行えたようで何よりです。ブラック・ベアは2体とも倒されたようですし、討伐組も戻って来ています。私たちも片付けて帰りましょう。」
「アイアイサー!」
「あ、その前に、ちょっと待っててください」
治療組のみんなも疲れているのが見える。
ヒールしておこう。
「ヒール」
・・・これで疲れも取れただろう。
「おお!疲れが取れたぞ!」
「やっぱ隊長すげぇ!」
「ありがとうございます!」
「俺たちも帰ろう!」
「おー!」
みんな楽しそうで何よりだ。
おっと。さっきの魔物の死体もアイテムボックスに入れないと。
アイテムボックス。収納。
・・・よし、私も帰ろう。
前にいる治療組の面々を見ながらふと思った。
あれ、もしかしてみんな男じゃないか?
私、1人だけ女だ。
うわぁ、すごい今更。
まぁ、少しだけ楽しかったしいいや。
「お疲れ様、隊長」
横からアレンハイドの声がした。
「そっちこそお疲れ。・・・てかなんで隊長なんて知ってるの?」
「だってさっき言われてたし」
「そっか。まぁいいや。・・・アレンハイド、無事だったんだね」
「ま、怪我人を運ぶだけだしな。マイカの方こそ大変だったんじゃないか?」
「まぁね。でも少し楽しかったよ。」
「そうか。・・・マイカが無事でよかった」
「え?」
「あ、いや、なんでもない。勝ててよかったな」
「うん、よかった。・・・私も、アレンハイドが無事でよかったよ」
「ん?」
「なんでもない。早く宿屋に行って無事を報告しに行こう!」
「いらっしゃーい・・・あら!お2人さん、戻ってきたのね!無事でよかったわー、本当に心配したんだから!ここに帰ってきたって言うことは魔物は倒されたのね!」
「はい、ご心配をお掛けしました。・・・これでお金を払えますね」
「そうねぇ、本当によかった!ささ、今日は疲れているでしょう。夕食できてるから早く食べてゆっくり休みなさい!」
「はい、ありがとうございます!・・・あ、ターシャちゃんのことなんですけど」
「あぁ、あの子にはまだ何も言ってないわよ、あの子は心配症ですぐ泣くから」
「そうですか。なら私からも何も言わなくて大丈夫そうですね」
・・・あの子のことだからきっとある程度のことは知っているんだろうな。
そんな事を考えながら、その日はいつもより早く寝た。
そういえば、あの日から街に出るとたまに治療組の人と会うと「隊長!」と声をかけられるようになった。
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